採用ノウハウ

〈外国人採用の鉄則〉伝え方で外国人応募者の受け止めは大きく変わる。「ここで働いてみたい」と思わせる求人資料の作り方とは?

外国人材を募集する際、求人票や資料で給与や仕事内容について明りょうに伝えることはもちろん、職場の雰囲気や生活環境についても紹介しましょう。外国(日本)に働きに行く際は、だれにでも不安があります。そこで、職場や生活の実態が分からない会社より、外国人の先輩たちが働く様子や生活の内容、職場の行事、地域の魅力などが具体的に分かる会社の方に傾きます。外国人の求人における情報の伝え方を紹介します。

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ポイント解説

給与や仕事内容について明りょうに説明:外国人材は「職務内容や手取り給料が事前説明と違う」と感じると、早期離職する傾向が大きくなります。求人票や資料で職務内容や給与について明りょうに説明し、面接でも確認しましょう。求人票や資料には次の事柄も記載してください。

  • 残業代(1年間の平均など)
  • 手当やボーナス
  • 寮費や光熱費(固定額の場合)など給与から天引きする費用
  • 外国人材の支出削減につながるサービス

職場の様子や生活環境をくわしく伝える:職場の写真▽先輩外国人の状況▽レクリエーション▽寮の写真▽寮と職場の距離▽スーパーの情報▽その地方・地域の魅力――などを伝えると、応募意欲を促進します。

外国人材向けに自社をプレゼンする意識で:伝え方によって候補者たちの理解や受け止め方は大きく変わります。自社をプレゼンするつもりで求人資料を作成しましょう。今後は外国人材の売り手市場になっていきますので、相手から「選んでもらう意識」も大切です。

画像は欠かせず、動画も効果的:文字だけの情報より画像・映像もある方が、イメージが豊かになります。

外国人材向けに特化した採用情報も:技人国の外国人や一部の特定技能外国人向けには、外国人社員の体験談などが効果的です。また、外国人材は待遇全般やキャリアプラン、評価制度、有給休暇などについて、日本人よりずっと細かく知りたがる傾向があります。

◆このページの内容

給与や仕事内容について明りょうに説明する

給与や職務内容に関する間違った事前認識を避ける

日本人の新入社員の多くは自分の希望と違う仕事を担当しても、「これは一つのプロセスや経験であり、いつか自分の希望する仕事を担当できる」と考えて仕事を続ける傾向があります。

しかし、多くの外国人材は自分がどんな仕事を担当するか、その仕事にどのような能力や経験が求められるかを重視する傾向があります

このため、外国人材は「職務内容や手取り給料が事前の説明と違う」と感じると、早期離職する傾向が大きくなります。

そこで、以下のような対策が有効です。

  • 求人票など:求人票や求人資料で職務内容や給与について分かりやすく説明する。
  • 面接時:面接の際にも給与や仕事内容について確認する。
  • 書面:職務内容を書面で説明して署名をもらう。
  • 動画:現場作業の場合は、動画を作成して作業内容を説明する

残業代についてくわしく

求人票に基本給だけを記載し、残業代を書かない例もあります。その場合、海外の人材会社が登録支援機関や監理団体などに残業代について尋ね、候補者たちはその情報をもとに応募するかどうかを決めます。その過程で間違った情報が伝わることもあり、就労後に「聞いていた給料と違う」という事態になりがちなので、注意してください。

ちなみに、特定技能外国人や技能実習生が基本給だけで満足して働くことは基本的にありません。残業代を含めた手取り給料の額が大事です。

手当・ボーナス・寮費

応募者を増やすには、基本給、残業代の平均(過去1年間の実績など)、手当、ボーナスなど収入に関わる情報を求人票にもれなく明りょうに記載することが大事です。

さらに、寮費や光熱費(固定額を徴収する場合)など、給与から天引きする費用についても記載すると、手もとに残るおカネを計算できますので、応募意欲が高まります。

給与が平均相場より少し低い場合は、寮費等を安く設定し、求人票に記載することをお勧めします。手もとに残るおカネが増えますので、手当を支給するのと同じ効果があります。

外国人材の支出削減につながるサービス

給与については、同じ職種・同じ地方での平均相場を意識する必要がありますが、平均を少し下回る場合は、上述のように寮費を安くするなど給与以外のさまざまな工夫で補うことができます。

例えば、自家栽培の米や野菜の提供、(スーパーのバックヤードの場合)売れ残った食品の提供など、食品を提供する事例もあります。

このような外国人材の支出削減につながるサービスは人材の定着に貢献しているほか、先輩から後輩への口コミにより採用時の応募増にもつながっています。参考情報として求人資料に載せると、応募促進につながります。

職場の様子や生活環境をくわしく伝える

前章では収入・支出と職務内容に関する事柄を求人票や資料でしっかり紹介することをお伝えしました。

それ以外に、職場の様子・雰囲気や生活環境が伝わるような資料も作成すると、候補者たちの関心を集めます。

外国人材は単に労働力を提供するためだけに日本に来るのではなく、日本で生活をすることになります。生活の豊かさを期待できるような情報があれば、応募意欲を高めます。

◆候補者が関心を持つ事柄の例

職場の様子

・会社の外観や中の職場の様子を写真も使って伝えます。登録支援機関や監理団体、または送出機関等に現地語への翻訳を依頼してください。

・会社紹介動画があれば、それも送出機関等に送ってください(現地語のナレーションや字幕があれば、より効果があります)。

先輩外国人材の状況

・職場にどの国籍の人が何人いるかとその内訳。例えば「フィリピン人7人(特定技能3人、技能実習4人。特定技能のうち2人は技能実習から継続勤務で、1人は他社から転入)とインドネシア人2人(技能実習1年目)」といった情報を記載します。

レクリエーション

・外国人材の多くは社員旅行や忘年会、バーベキューなど、職場単位のレクリエーションを喜びます。そのようなイベントが行われているのであれば、写真を多めに使って紹介します。

寮の費用と内容

・寮費を伝えるほか、寮の写真(外観、内観)も紹介します。候補者たちは住環境について大きな関心を持っています。

寮と職場の距離

・特定技能外国人や技能実習生の多くは雨の日にはレインコートを着て自転車で出勤し、冬の寒い日も自転車です。寮と職場の間の距離も求人資料に記載します。

家庭菜園の提供

・地方の受け入れ事業者では、外国人材が会社や寮の敷地で家庭菜園を設けるケースがあります。そのような便宜供与をしている場合は、写真を添えて説明します。

スーパーの場所と様子など

・寮からどれぐらい離れた場所にどのようなスーパーがあるか記載します。スーパーが遠い場合は、会社が定期的に車で送迎することが多いですが、その頻度や内容についても記載し、応募者を安心させましょう。

その地方・地域の魅力

・日本の地方都市に関する情報は外国人にあまり伝わっていません。地元の繁華街の様子や町の風景、祭りの様子、観光地の景観などを豊富な画像や動画で伝えると、「この土地で暮らしてみたい」という思いを高めることができます。

外国人材向けに自社をプレゼンする意識で

きれいな寮を用意し、写真も使って紹介。

候補者たちに安心してもらうために豊富な情報を

職場の魅力、生活の魅力をきちんと伝えれば応募は増える

給与や仕事内容、さまざまな条件や環境(先輩外国人の状況、寮の費用や質、スーパーまでの距離、地元の魅力など)を求人票や資料に盛り込みましょう。

外国に働きに行くことについては、だれもが不安を持っています。その中で、その職場や生活環境について情報が多ければ多いほど、候補者たちは安心し、応募意欲が高まります。

例えば、給料は少し高いが職場や生活の様子がまったく分からないA社より、給与は少しだけ少なくても、豊富な情報のおかげで働きやすさや快適な生活を期待できるB社の方が、人気が高くなる傾向があります。

ある果樹園の事例

九州のある果樹園には技能実習生2人の求人に対しインドネシア人7人が応募していましたが、仲介している監理団体の関係者が面接前に送出機関を訪れてその7人と会いました。そして、先輩外国人が働いている様子や、会社が無料提供している日本語教室の様子、地元の観光地や繁華街の景観などを、写真をたくさん見せながら説明しました。

すると、彼女たちの表情がみるみる明るくなり、たくさんの質問が出ました。7人はこの職場で働きたいという気持ちを一層強め、その後の面接で熱のこもった自己PRを展開しました。

伝え方によって候補者たちの受け止めは変わる

職場や生活の様子、地域の魅力について、豊富な情報を提供することが大切です。そして、伝え方によって候補者たちの理解や受け止め方は大きく変わります。そのことを意識し、自社をプレゼンするつもりで求人資料を作成してください。

選ばれる時代に

これからは受け入れ事業者が外国人材を選ぶだけではなく、事業者が外国人材から選ばれる側面も強くなってきます。自社をいかに売り込むかという意識を早く持った事業者が、外国人材を安定的・継続的に雇用していくことができます。

画像は欠かせず、動画も効果的

応募者は文字だけの情報より、画像・映像も見た方が、イメージが豊かになります。求人資料に画像や動画も用いると効果的です。

関西のある法人は介護の技能実習生を募集するにあたって職場の紹介動画を作成しました。その動画には、先輩実習生たちが働く様子や仕事の教育体制(=たくさんの看護師が教える)の紹介のほか、改装して新しい家電もそろえたきれいな寮の映像も盛り込みました。

この法人は同職種・同地域の平均より少しだけ給料が低く、以前は求人への応募が少なかったのですが、紹介動画を作ってからは、給料以外の魅力がしっかり伝わるようになり、今はたくさんの応募者が集まるそうです。

外国人材向けに特化した採用情報も

日本で数年間生活した外国人材(技人国や一部の特定技能)の求人に関しては、高度な日本語力を求めるケースが多く、採用も日本人と同列に行うことがあります。

ホームページ(HP)や求人パンフレットに掲載する採用情報も外国人向けと日本人向けを分けず、日本人社員の体験談だけを載せているケースがよくあります。しかし、外国人材をもっと引きつけるには、外国人材を意識した採用情報も盛り込むと効果的です

外国人材は日本人とさまざまな条件が違います。例えば、多くの外国人材は数年働いたら少なくとも一度は母国に本格的に帰国し、そのまま日本に戻らない場合もあります。そのような外国人たちが、採用情報で例えば10年勤務した日本人社員の体験談を読んだところで、共感を覚えることはありません。

外国人材が最初から日本で10年働こうと決めているケースは必ずしも多くありません(働いている間に結果として長くなる場合はあります)。また、家庭を持ったときに生活の場所をどうするか、子どもの学校をどうするかなどの判断材料も日本人とは違います。職場で日本人と同じように出世できるかも不透明です。

そこで、外国人材向けには、外国人社員の体験談などを紹介すると効果的です。自分と同じ外国人がその会社でどのような仕事をしてどのように評価され、どのようなキャリアを積んでいるかが分かれば、外国人材はその体験に自分の未来を重ね合わせてイメージすることができます。

また、先輩外国人が体験談で「当社は外国人も日本人と同じように処遇し、同じように正当に評価してくれます」というようなPRをすれば、外国人材もしっかり受け止めることができます

このほか、外国人材は給与を含む待遇全般やキャリアプラン、人事評価制度、有給休暇などについて、日本人よりずっと細かく知りたがる傾向があります。

外国人材が知りたがる情報を外国人材向けに提供すると、彼らの応募意欲を高めることができます。

まとめ

このページのまとめ

◎求人票や資料で職務内容や給与について明りょうに説明し、面接でも確認しましょう。残業代(1年間の平均など)、手当やボーナス、寮費や光熱費(固定額の場合)、外国人材の支出削減につながるサービスも記載してください。

◎職場の写真▽先輩外国人の状況▽レクリエーション▽寮の写真▽寮と職場の距離▽スーパーの情報▽その地方・地域の魅力――なども伝えましょう。

◎今後は外国人材の売り手市場になっていきますので、相手から「選んでもらう意識」も大切です。自社をプレゼンするつもりで求人資料を作成してください。

◎求人資料に画像や動画も用いましょう。

◎外国人社員の体験談など外国人材向けに特化した採用情報も提供しましょう。

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