採用ノウハウ

〈外国人採用の鉄則〉目からうろこの外国人採用面接のコツ:技人国・特定技能編

会社の理念に合う外国人材を見分けるには面接でどういう質問をしたらよいのでしょうか?そのような疑問にお答えするとともに、外国人採用で陥りがちな「採用基準のずれ」を結果分析に基づいて修正する方法や、日本人と採用プロセスを分ける手法、「選んでもらう立場」を意識することなど、技人国(技術・人文知識・国際業務)や特定技能の人材採用に役立つ必須知識をお伝えします。

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ポイント解説

欲しい人材像を明確にする:まず、欲しい人物像を具体的にイメージしましょう。どんな人を採用したいのか、なるべく細かい点まで具体的に書き出します。

過去の経験や取り組みを掘り下げる:「これまでにやってきたこと」について具体的に話してもらい、その内容を掘り下げて聞くことで、事実に基づいて応募者の資質や性格、価値観が分かります。志望動機や目標については、その後に補足的に聞きます。

会社の理念や社風に合う人材を探す:会社の理念や社風が好きな外国人材を雇いましょう。特に外国人雇用の初期段階では、能力よりも会社を好きになってくれそうかどうかで採用しましょう。

職場や仕事に対する価値観を知るための質問の例:

  • これまでのアルバイトで一番働きやすかった職場はどこですか?それはなぜですか?
  • 逆に働きにくかった職場はどこですか?なぜですか?そのときどう対応しましたか?

過去の結果分析で採用基準を適正化:採用時の面接メモ(何が高く評価され、何がマイナス評価になったか)を残しておき、入社後に活躍した人が採用時にどのように評価されていたかを分析します。逆に、期待外れだった人の採用時の評価についても分析します。これによってもとの採用基準を適正化することができます。

日本人と採用プロセスを別にする:ある会社では、自己紹介動画の提出や正式面接前の簡易面接(コミュニケーション力を中心に評価)など、外国人材だけの採用プロセスを設け、外国人材の採用チームには外国人も入れています。

「選んでもらう立場」を意識する:海外就労先としての日本の人気は下がっているうえ、人材獲得をめぐる国際競争が激化しています。日本の事業者は「選んでもらう立場」を意識して求人・採用を行っていかなければなりません。

日本語試験のレベルだけで判断しない:日本語試験のレベルと会話力は違います。試験レベルだけで採用をせばめると、良い人材を十分に確保できない可能性があります。

日本人にとっては「就社」、外国人にとっては「就職」:外国人材は職務内容を重視します。本人が想定していたのとは違う仕事をさせる場合、丁寧に説明しましょう。

◆このページの内容

[技能実習・特定技能編の内容]

欲しい人材像を明確にする

採用にあたっては、まず、欲しい人物像を具体的にイメージしましょう。どんな人を採用したいのか、細かい点まで具体的に書き出します。

採用したい人物像をイメージしたら、キャラクター要素とそれ以外に分けて整理し、それらに基づいて履歴書・エントリーシートや面接などで応募者を評価していきます。

資格・能力・経歴・就労条件

  • 在留資格
  • 夜勤ができるかどうか
  • 日本語試験のレベル
  • 会話力、コミュニケーション力
  • 経験・学歴

キャラクター

  • 行動力、計画力、創造力、適応力、柔軟性、まじめさなど
  • 意欲・やる気
  • 協調性(チームワーク)、リーダーシップ
  • ストレス耐性

過去の経験や取り組みを掘り下げる

これまでにやってきたことを中心に聞く

面接の定番として、外国人材にも志望理由や長所・短所を聞き、自己PRもしてもらいますが、応募者が話す内容は「経験・実績(やってきたこと)」と「計画・目標(やろうとしていること)」に大別されます。

面接では「経験・実績」を中心に質問を掘り下げ、「計画・目標」については順番を後にします。

まず、応募者が「これまでにやってきたこと(経験・実績)」について具体的なエピソードを話してもらいます。そして、面接担当者がその内容を掘り下げて聞くことで、応募者のさまざまな資質や性格、価値観が分かってきます。

例えば、「焼き鳥店で3年間アルバイトをした」という経験がある場合、その職場でどのような課題があり、それに対してどのように取り組み、どのような成果を得られたのかを具体的に聞いていきます。

「やってきたこと」をいくつか話してもらうことで、事実関係に基づいて本人の資質や考え方、行動力、価値観などの人物像が分かります。その後、志望動機について聞けば、その人物像を確認したり補充したりすることができます。

長所・短所(強み・弱み)

長所・短所については、その長所が過去にどのような場面で発揮され、どのような結果につながったのかを具体的に聞きましょう。

また、入社後の職務に関して起こりうる困難を面接担当者が例示し、応募者がそれに対してどのように対処するかを聞くと、その長所が職場でどのように生きるかを推測することができます。

会社の理念や社風に合う人材を探す

会社を好きになってくれそうな外国人材を採用する

外国人材を増やしていくと、職場に同国人のコミュニティが生まれ、その中のリーダーの価値観や意見がメンバー全体に影響を与えることがあります。

会社を好きな人がリーダーだと、コミュニティをうまくまとめてくれますし、会社側はリーダーを通じて平素から外国人材の不満の種を把握し、火種が大きくなる前に改善することができます。

逆に、リーダーが会社に批判的な場合は、ほかのメンバーもリーダーに引っ張られて会社への不満を強めます。特に外国人採用の初期段階で会社へのロイヤルティの低い人がコミュニティ・リーダーになってしてしまうと、早期離職が相次ぐ結果にもなりかねません。

そこで、会社としては、できるだけロイヤルティの高い人にリーダーになってもらえると助かりますが、それには、会社の理念や社風と合う人材を採用することが大切です。

特に外国人採用の初期段階では、能力よりも、その人が会社を好きになってくれるかどうかに主眼を置いて採用しましょう。

仕事に対する価値観をはかるには?

職場や仕事に対する応募者の価値観を分析するには、面接で例えば下記のような質問を行います。

  • これまでのアルバイトで一番働きやすかった職場はどういう職場ですか?それはなぜですか?
  • 逆に働きにくかった職場はどういう職場ですか?それはなぜですか?また、そのときどう対応しましたか?
  • 前職を辞めた理由は何ですか?

こうした質問によって、仕事や上司・同僚に関するその人の価値観を見極めていきます。

その際、嫌いなことや嫌いな人とどう向き合ったかも聞きます。困難を残り超えるために前向きに取り組んだ経験を話す人もいれば、辞めた理由について周囲の責任ばかりを話す人もいます。

過去の結果分析で採用基準を適正化

受け入れ事業者は応募者の経験や将来計画などを履歴書・エントリーシートと面接によって総合的に分析します。しかし、採用の際に評価の高かった人が入社後はあまり活躍していないとか、逆に採用時は低評価だったのに入社後に大きな戦力になっている事例もあります。

そこで、入社後に活躍している人材が採用時にどのように評価されたかを分析し、採用基準を修正することが必要です。

採用時の面接メモ(何が高く評価され、何がマイナス評価になったか)などを残しておき、入社後に活躍した人が採用時にどのように評価されていたかを分析します。逆に、期待外れだった人の採用時の評価についても分析します。

これによって採用時に本来重視すべきだった評価ポイントと実は重要ではなかった評価ポイントが分かり、採用基準を適正化することができます。

例えば、「農業の技能実習や特定技能で、日本の農業技術を覚え、将来は母国で農園を経営したい」という人を採用したが働きぶりは今ひとつで、逆に「おカネを稼ぐことが目的なので、仕事内容にはこだわらない」と答えた人が大活躍しているという状況が分かったとします。

その場合、従前は「将来の目標や夢」に関する説明を重視していたのを改め、今後は別の評価ポイントに重点を移します。

このように、採用した人たちの活躍ぶり(結果)と照合しながら、採用時の評価基準(原因)を変えていくことで、より自社に合った人材を選ぶことができるようになります。

日本人と採用プロセスを別にする

日本人とは別のプロセスで採用する

技人国や特定技能の人材を採用するにあたり、「日本人と同じ仕事をしてもらい、待遇も日本人と同じなので、採用プロセスも同じ」というケースがよくあります。しかし、外国人材は置かれている環境・条件が日本人とは違うので、採用プロセスも日本人と別にした方が良いという考え方もあります。

ある飲食チェーンでは、特定技能外国人を正社員として多数雇用し、各店に複数配置しています。日本人と待遇は同じで、外国人材も経験や勤務実績によって管理職にもなれます。

しかし、採用については、日本人の応募者には行わない次の2つのプロセスがあります。

  1. 応募の際に日本語で自己紹介をする動画を出してもらい、会話力が高そうな人を選びます。
  2. その中から履歴書全体を吟味して「簡易面接」に進んでもらう人を決めます。その面接は外国人材のみが対象で、会社に関する質疑応答を行って仕事や社風についてよく知ってもらうとともに、応募者のコミュニケーション能力や日本語会話力を中心に評価します。

これは、外国人材は、入社後の人事評価や待遇は日本人と同じにすべきですが、採用時は外国人材特有の選考ポイントがありますので、プロセスを別にした方がよいという考え方です。

採用チームに外国人材を加える

この会社では、さらに、外国人材を採用するチームに同社で働く外国人材(技人国)も加わり、外国人材から見た評価も重視して採用を決めます。これも、日本人の採用とは異なるプロセスです。

「選んでもらう立場」を意識する

別の飲食チェーンでは、最終面接で、応募者と同じ国籍の先輩社員と質疑応答する時間を設けています。これも日本人の採用とは異なるプロセスの例です。

同じ国の先輩と交流することで、応募者の不安もやわらぎ、会社に親近感を持ちます。これによって、応募者が複数の企業に合格した場合でも、この会社を選んでくれる確率が高くなります。

外国人材に関して、日本の受け入れ事業者はこれまで「選ぶ立場」だけで採用を行ってきましたが、送出諸国の人々にとって海外就労先としての日本の魅力は小さくなったうえ、外国で働く労働者(移住労働者)に対する需要は世界各地で増えており、人材の奪い合いになっています。

日本の受け入れ事業者はこのような状況を踏まえ、外国人材から「選んでもらう立場」を意識して求人・採用を行っていかなければなりません

日本語試験のレベルだけで判断しない

外国人材を採用する際に日本語力は重要な基準の一つです。ただし、日本語試験のレベルだけで採用をせばめてしまうと、良い人材を十分に確保できない場合もあります

例えば、外食産業の場合、接客などで日本語を使うため日本語能力試験(JLPT)のN2を採用基準に設定する会社も多いですが、JLPTなどの日本語試験には文法・読解・漢字の問題もあり、「会話は得意だけど、読み書きや漢字はできない」という人はN2になかなか合格できません。

したがって、日本語会話力と日本語試験のレベルは比例しません

前述の外食企業では、かつてはN2合格者の中から面接に進む人を決めていました。しかし、それでは接客が上手で根気よく働いてくれる外国人材を十分に確保できなかったので、日本語試験の要件を引き下げました。

今では、N4まで基準を緩和し、そのかわり自己紹介動画で面接に進む人を決め、面接で会話力・コミュニケーション力をチェックしています。これによって会話力や接客力の高い人材を十分に集めることができ、現場が以前よりうまく回るようになったそうです。

日本人にとっては「就社」、外国人にとっては「就職」

日本の仕事文化として「就職=就社」の意味合いが強く、特に「総合職」ではさまざまな職務を担当させられることがあります。このため、日本人の多くは希望と違う仕事を担当しても、「これは一つのプロセスや経験であり、いつか希望する仕事を担当できる」と考えて仕事を続けます。

しかし、外国では、職種別採用(ジョブ型雇用)が一般的です。採用時の雇用契約で職務内容が明確になっていることが多く、基本的にそれ以外の職務は行いません。多くの外国人材にとって、どこの会社で働くかも大事ですが、どのような仕事を担当し、その仕事にどのような能力や経験が求められるかということも大事です。

このため、外国人材は「職務内容が事前の説明や認識と違う」と感じると、早期離職する傾向があります。

受け入れ事業者としては、「メインの職務に付随して関連業務があり、それについては説明を省いてもよい」とは考えず、職務内容について求人資料や面接で明確にしたうえで、入社後もその仕事をさせる理由を丁寧に説明する必要があります。

まとめ

このページのまとめ

◎まず、欲しい人物像を具体的に書き出しましょう。

◎「これまでにやってきたこと」について具体的に話してもらい、内容を掘り下げて聞くことで、事実に基づいて応募者の資質や性格、価値観が分かります。

◎会社の理念や社風が好きな外国人材を雇い、その人が職場の外国人コミュニティのリーダーになると、外国人材をまとめやすくなります。特に外国人雇用の初期段階では、能力よりも会社と合いそうかどうかに主眼を置いて採用しましょう。

◎職場や仕事に対する価値観を知るための質問の例

  • これまでのアルバイトで一番働きやすかった職場はどこですか?それはなぜですか?
  • 逆に働きにくかった職場はどこですか?それはなぜですか?そのときどう対応しましたか?

◎採用した人たちの活躍ぶり(結果)に照らして採用時の評価基準(原因)を変えていくことで、より自社に合った人材を選ぶことができるようになります。

◎ある会社では、自己紹介動画の提出や正式面接前の簡易面接(コミュニケーション力を中心に評価)など、外国人材だけの採用プロセスを設け、採用チームにも外国人を入れています。

◎日本の人気は下がっているうえ、外国人材獲得をめぐる国際競争が激化しています。日本の事業者は「選んでもらう立場」を意識して求人・採用を行っていかなければなりません。

◎日本語試験のレベルだけで採用をせばめると、必要な人材を十分に確保できない場合があります。

◎外国人材は職務内容を重視します。本人の想定外の仕事をさせる場合、丁寧に説明しましょう。

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