採用ノウハウ

〈採用の鉄則〉選ばれる企業の条件:特定技能2号の人気の理由とキャリアサポートの大切さ

日本に無期限に在留でき永住権取得も目指せる特定技能2号の対象分野が拡大され、2号を目指す外国人材が急増しました。外食産業などで特定技能外国人の獲得競争が激しくなっていますが、外国人材から選ばれるためには、特定技能2号になるための実務経験ポストや学習サポートを提供している事業者が圧倒的に優位になっています。特定技能2号の人気の秘密と、2号の在留資格取得に向けて受け入れ事業者がどのようにサポートできるのか紹介します。

1分で読める記事の要点〈時間のない方はこちらだけ!〉

ポイント解説

特定技能2号が外国人材の人気を集めている理由:

  • 2号になれば、要件を満たせば永住権を取得することができる。
  • 特定技能1号の在留期間は最長5年だが、2号は実質的に無期限。
  • 2号になれば、家族(配偶者や子)を日本に呼び寄せることができる。

永住権のメリット:素行要件、独立生計要件、国益適合要件を満たせば、下記のようなメリットがある永住権を取得できます。

  • 在留期間が無期限
  • 就労制限がない(家族も)
  • 社会的信用が増す
  • 起業に有利

「選ばれる企業」の条件-特定技能2号への実務経験ポスト: 

  • 特定技能1号から2号に移行するためには一定の実務経験が必要です。具体的には、指導・管理、現場での作業、工程管理などで、外食業では2年以上の指導・管理経験(副店長など)、工業製品製造業では3年以上の実務経験、ビルクリーニングでは2年以上の現場管理経験など。
  • 2号への実務経験ポストの有無で求人の人気が大きく左右されます。

「選ばれる企業」の条件-特定技能2号の受験サポート:

  • 受け入れ事業者が特定技能2号の技能試験の受験勉強をサポートする例がたくさんあります。
  • 2号になるためには高い日本語力も必要なので、事業者が外国人社員の日本語学習をサポートする例や日本語試験合格レベルに応じて手当を支給する例も多数あります。

◆このページの内容

特定技能2号が外国人材の人気を集めている理由

 特定技能2号の対象分野の拡大

特定技能2号の対象分野は従来、建設と造船・舶用工業の2分野だけでしたが、2023年6月の閣議決定でビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業が追加され、合計11分野に拡大されました。

ただし、介護分野には特定技能1号などからステップアップできる在留資格として「介護」があるため、2号の対象外となっています。

2号特定技能外国人の役割には、例えば下記のようなものがあります。

  • 外食業:店舗管理や他の従業員たちの指導など、飲食店の運営を担う。
  • 宿泊:フロント業務や接客に加え他のスタッフの教育やシフト管理も担当する。
  • 飲食料品製造業:食品加工ラインの管理なども担当する。
  • ビルクリーニング:清掃作業だけでなく他のスタッフの指導・管理も担当する。
  • 自動車整備:整備業務だけでなく他のスタッフへの技術指導も担当する。
  • 建設:他のスタッフの指導・管理も担当する。

2号特定技能外国人には1号よりも熟練した技能が求められます。豊富な実務経験があるか現場で指導役ができる人材が想定されており、1号より多くの権利を与えられています。

特定技能2号のメリットとは?

特定技能1号と2号の主な違いは下の表の通りです。最大の違いは、2号になると永住権取得への道が開かれることです。

◆特定技能1号と2号の主な違い

特定技能1号特定技能2号
在留期間通算5年まで何度でも期間更新できる
1年・6カ月・4カ月ごとの更新3年・1年・6カ月ごとの更新
永住権の取得できない要件を満たせば取得できる
技能水準相当程度の知識または経験を必要とする技能熟練した技能 (各分野の技能試験への合格が必要)
外国人支援支援計画の策定・実行が必要支援計画は不要
家族の帯同不可条件を満たせば可能
日本語試験基礎段階に当たるA2レベル(JLPT・N4など)以上の日本語能力漁業と外食業では、日本語能力試験(JLPT)N3以上が必要
試験の実施状況国内外で実施中主に日本国内で実施中

特定技能1号の在留期間が最長5年に制限されているのに対し、特定技能2号では、特に問題を起こさなければ、在留期間を何回でも更新でき、日本で実質無期限に働くことができます。また、2号の場合、扶養する能力があると認められれば、家族(配偶者や子)を日本に呼び寄せることができますし、要件を満たせば永住権を取得することもできます。

技人国でなくても永住権を目指せる

従来も技人国(技術・人文知識・国際業務)や高度専門職など高度人材の中には日本で長期間働きたいとか永住したいと考える人材が相当数いました。これらの在留資格は何度でも更新できますし、要件を満たせば永住権を取得できるからです。

しかし、技人国の在留資格を得るには、大卒や日本の専門学校卒などの学歴が必要です。技能実習生や1号特定技能外国人の多くは高卒か中卒なので技人国にはなれず、これまでは、技能実習や特定技能1号が修了すると、日本を去るしかありませんでした。

ところが、技人国になれない外国人材にも永住権取得への道を開く特定技能2号の対象が拡大されたので、これを目指す人が急増しました。

家族を呼べる

外国人材が日本で長年働こうという気持ちになるためには、仕事のやりがいや給与も大切ですが、家族と一緒に良い生活をできるかどうかも大きなポイントになります。

2号特定技能外国人になれば、扶養する能力があると認められると、配偶者や子どもも日本で一緒に暮らすことができます。これも技能実習生や1号特定技能外国人には認められていない権利なので、特定技能2号の人気の理由の一つになっています。

永住権のメリットと取得要件

ところで、永住権への道が開ける特定技能2号の魅力を理解するには、永住権を取得するとどのようなメリットがあるのかについて知らなければなりません。他の記事でくわしく説明していますが、ここでも簡単に触れておきましょう。

永住者は約92万人

実際に日本に永住するかどうかは別にして、永住権を取得できるチャンスがあれば、ほしいと考える外国人材が多いのが実態です。永住権を持つと、母国の国籍のまま活動の制限なく日本に永続的に住むことができます。在留資格の名前は「永住者」で、2024年12月末時点で永住者は91万8116人います。

永住権のメリット

日本の永住権を取得すると、次のようなメリットがあります。

◆永住権を取得することによるメリット

在留期間が無期限になる
一般の在留資格には4カ月~5年の在留期間があり、期間満了前に在留資格を変更・更新するか帰国しなければなりません。しかし、「永住者」の在留期間は無期限で、更新手続きも不要です。
就労制限がなくなる
大半の在留資格では、就労時間や働ける職種に制限がありますが、永住者は職種や雇用形態を自由に選べ、就労時間の制限もなくなります。
家族の就労制限もない
一般的な在留資格の場合、家族(在留資格「家族滞在」)は「資格外活動」の許可を得た上で週28時間までしか就労することができません。しかし、永住者の家族(在留資格「永住者の配偶者等」)には、就労制限はなく、永住者と同じように自由に働くことができます。
日本での社会的信用度が上がる
永住権を取得するには、さまざまな要件が求められます。永住権取得はその厳しい条件を満たしたという証明なので、その人の社会的信用が高まり、不動産の賃貸契約も容易になり、住宅ローンや事業ローンなどの銀行融資の審査も通りやすくなります。
日本での起業に有利
外国人が日本で事業を経営する場合、500万円以上の出資で会社を設立するなどの要件で「経営・管理」という在留資格を取得します。しかし、「永住者」や「永住者の配偶者等」はそのような要件なしで事業を経営できます。
配偶者と別れても在留資格に影響しない
日本人の配偶者は「日本人の配偶者等」という在留資格を得ますが、その日本人と離婚すると、在留資格も失います。しかし、「永住者」の場合は、配偶者と別れても在留資格に影響はありません。

永住権を取得するための要件

永住権を取得するためには3つの要件があります。

  • 素行要件:刑罰を受けたことがないことや交通違反などを繰り返し行っていないこと。
  • 独立生計要件:世帯全体の収入・資産が十分にあること。
  • 国益適合要件:日本で継続して10年以上居住し、税の滞納などもないこと。
    10年より短い期間で永住許可を申請できる在留資格もあります。

「選ばれる企業」の条件:特定技能2号への実務経験ポスト

特定技能2号になるために必要な実務経験

特定技能1号から2号に移行するためには一定の実務経験が必要となります。具体的には、他のスタッフの指導・管理や工程管理など分野によって異なります。例えば、外食業では2年以上の指導・管理経験(副店長など)、工業製品製造業では3年以上の実務経験、ビルクリーニングでは2年以上の現場管理経験などです。

そして、実務経験を証明するために、勤務先が作成した在職証明書や業務内容の詳細などを入管に提出する必要があります。

2号移行に必要なポストの提供は「選ばれる企業」の条件

外国人材と日本企業の求人をマッチングさせるサービスを提供している会社によると、同社が仲介している特定技能1号の求人に関して外国人材側から受ける質問の中で一番多いのは、その求人を提供している会社には特定技能2号になるための実務経験ポストやサポートがあるかどうかという質問だそうです。

同社によると、1号特定技能外国人を募集する場合、2号になるための実務経験ポストがあるのとないのとでは、求人に対する人気がまるで違うとのことです。例えば、「給料が少し高いが、2号になるために必要な実務経験ポストやサポートがない会社」よりも「給料は少し安いが、2号への実務経験ポストやサポートがある会社」の方が圧倒的に人気があるそうです。

「選ばれる企業」の条件:特定技能2号の受験サポート

特定技能1号から2号に移行するためには、技能試験や日本語試験への合格も必要です。受け入れ事業者がこれらの試験の受験に向けてサポートすることも「選ばれる企業」の条件になります。

特定技能2号へのキャリア支援①:技能試験対策

2号特定技能外国人になるためには特定技能2号の技能試験に合格する必要があります。各分野の試験名称は「外食業特定技能2号技能測定試験」「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」「製造分野特定技能2号評価試験」「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」などさまざまです。

分野によって試験の難易度は変わりますが、試験内容は一般的に難しいとされています。このため、1号特定技能外国人社員の受験対策をサポートしている事業者もあります。

例えば、ある外食産業の会社は、2号に必要な実務経験ポストを提供したうえで、2号志望者に毎月2回、勤務時間外に対面で技能試験対策の学習会を行っています。講師役の日本人社員が試験対策のテキスト(=オンラインで公開)を読み上げて意味を解説するという内容です。試験問題もテキストも日本語自体が難しいので、こうやって一緒に読んで内容確認や理解を進めるだけでも、外国人社員にとっては助けになるそうです。

同社はさらに、上限3万円の資格取得支援制度を設けており、特定技能2号の技能試験受験はこの支援制度で2回まかなえます。試験会場には人事担当者が同行し、励まして送り込みます。

受け入れ事業者がこのように外国人材のキャリア支援に積極的に取り組むと、外国人材から信用され、良い口コミも広まり、新しい求人を出したときに選ばれやすくなります。

特定技能2号へのキャリア支援②:日本語力アップ

2025年6月時点で、外食業と漁業の2分野で特定技能2号になる要件として日本語能力試験(JLPT)N3以上への合格が求められています。将来はN3要件がほかの分野にも広がる可能性もあります。

また、特定技能2号の技能試験はどの分野でも日本語で行われ、問題文はJLPT・N2レベルの日本語で書かれていることが多いため、問題文を読解する日本語力が必要です。このため、特定技能2号の技能試験に対応するためにも、1号特定技能外国人は相応の日本語力を身に付けなければなりません。

さらに、2号特定技能外国人になった場合、現場のリーダーや責任者としてそれなりの日本語能力が求められます。違う母国語の部下やスタッフに日本語でわかりやすく指示・指導をしなければなりません。

特定技能外国人には、このように高い日本語力が求められるので、外部から日本語教育の講師を招いて外国人社員の日本語学習をサポートしている受け入れ事業者もあります。可能であれば、社内で休み時間などに日本人とたくさん会話できるように配慮することも大切です。

また、日本語能力試験(JLPT)N3以上に合格した特定技能外国人や技能実習生に資格手当などを支給している事業者もたくさんあります。

まとめ

このページのまとめ

◎特定技能2号になれば、在留期間を何度でも更新でき、家族を日本に呼ぶこともできます。さらに、要件を満たせば永住権を取得することもできます。このため、特定技能2号が外国人材の人気を集めており、日本で働く際の新たな魅力になっています。

◎永住権の主なメリットは下記の通りです。

  • 在留期間が無期限
  • 就労制限がない(本人も家族も)
  • 社会的信用が増す
  • 起業に有利

◎特定技能1号から2号に移行するためには一定の実務経験が必要です。その実務経験をするためのポストを用意しているか否かによって特定技能1号の求人に対する応募者数が大きく変わります。このポストの用意は今後、外国人材から選ばれるために必須となっていきます。

◎受け入れ事業者が特定技能2号技能試験の受験勉強をサポートする例が増えており、外国人材からの人気・信頼につながっています。

◎特定技能2号では高い日本語力が必要なので、事業者が外国人社員の日本語学習をサポートする例も多いですし、日本語試験合格のレベルに応じて手当を支給する例もあります。

-採用ノウハウ

error: Content is protected !!