未分類

〈外国人採用の基礎〉在留資格外の仕事をさせると不法就労助長罪

多くの外国人労働者に取材すると、本来はホワイトカラーの仕事しかできない「技術・人文知識・国際業務」の在留資格なのに工場で単純労働をさせられているケースが多々あります。大企業の大きな工場でも例外ではなく、同様のケースがまん延しているようです。しかし、在留資格で認められていること以外の仕事をさせることは入管法違反(不法就労助長)に該当し、取り締まりも厳しくなっています。コンプライアンスの観点からも違法状態の早期是正が望まれます。

1分で読める記事の要点〈時間のない方はこちらだけ!〉

ポイント解説

・不法就労助長罪とは:在留資格で認められた範囲外の仕事をすると不法就労活動(入管法違反)になります。不法に入国して在留資格を持たない外国人や在留期限が切れた状態で働く場合も不法就労です。

・不法就労助長の例:例えば、「技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)」は原則としてホワイトカラーの仕事を行うための在留資格です。工場などでも働けますが、専門技術・知識を伴う仕事でなければならず、単純作業だけをすることはできません。技人国の外国人にホテルの清掃・ベッドメーキングや飲食店のホール・調理、建設の現場作業、工場の単純労働、警備員、コンビニ販売員、農業の現場作業などをもっぱら担当させることは不法就労助長になります。

・不法就労助長罪の3つのカテゴリー:① 不法滞在の外国人などを働かせた場合(密入国者や在留期限が過ぎた人、退去強制が決まっている人を働かせた場合) ②就労が許可されていない外国人を働かせた場合(旅行者や資格外活動許可を受けていない留学生を働かせた場合など) ③ 在留資格で許可されていない業務をさせた場合。

・人材派遣や業務委託も不法就労助長罪の対象です。

・外国人を採用するときの確認ポイント:在留カードで、氏名・顔写真(本人かどうか)▽在留資格(どのような仕事に従事できるか)▽就労制限の有無(「就労不可」の場合はカード裏面で資格外活動許可の有無を確認)▽在留期間--などを確認します。

偽造在留カードの見分け方:真正な在留カードにはホログラムやすかしなどの識別情報が数点組み込まれています。また、入管庁が無料配布している「在留カード等読取アプリケーション」は在留カードのICチップに入っている情報を読み取ります。

・不法就労状態が判明したときは:就労をただちに中止させ、専門家に相談しましょう。

◆このページの内容

不法就労助長罪とは

不法就労助長罪とは

不法就労とは

不法に入国して在留資格を持たない外国人や在留期限が切れた外国人が日本で働くと、不法就労活動になります。

また、在留資格は日本に中長期的に滞在するすべての外国人に付与されますが、在留資格ごとに日本で行うことのできる活動(従事できる仕事)が異なります。在留資格で認められたこと以外の仕事をすることも不法就労(入管法違反)になります。

例えば、「技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)」は原則としてホワイトカラーの仕事を行うための在留資格です。工場などでも働けますが、専門技術・知識を伴う仕事でなければならず、単純作業だけを担当することはできません。「国際業務」についても、外国の文化や感受性を使う仕事が対象なので、それに当てはまらない仕事はできません。

したがって、技人国の外国人にホテルの清掃・ベッドメーキングや飲食店の接客・調理、建設の現場作業、工場の単純労働、警備員、コンビニ販売員、農業の現場作業などをもっぱら担当させることは不法就労助長になります。

不法就労助長罪とは

不法就労助長罪(入管法73条の2)とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした場合に適用される罪です。不法就労をした本人も入管法違反になりますが、不法就労で働かせた側も同法違反(不法就労助長)に問われるのです。

外国人を雇用するときに知識不足や確認不足(在留カードの確認不足など)が原因で不法就労と気付かなかった場合でも不法就労助長罪に問われることがあります。

2025年6月から不法就労助長罪の罰則が強化され、法人や雇用主などに対して5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金(またはその両方)が科されることになりました。

不法就労助長罪の適用対象

不法就労助長罪の適用対象は、不法就労させた法人と個人▽不法就労させるために自己の支配下に置いた者▽不法就労をあっせんした者――です。

「不法就労させた法人と個人」には外国人を派遣して不法就労させた者も含まれます。また、直接雇用ではなくても、外国人に業務を委託して不法就労させた場合も処罰の対象になります。

「自己の支配下に置く」とは、具体的には不法就労の外国人に寮を提供したり、不法就労の外国人からパスポートを預かったりすることなどを指します。      

不法就労助長罪の3つのカテゴリー

不法就労助長罪には大きく分けて3つのカテゴリーがあります。

◆ 不法滞在の外国人を働かせた場合

密入国者や在留期限が過ぎた人(いずれも不法滞在者)、退去強制が決まっている人を働かせた場合、不法就労助長になります。

◆就労が許可されていない外国人を働かせた場合

就労できる在留資格とそうでない在留資格があります。就労できない在留資格の外国人を働かせると、不法就労助長になります。旅行者や資格外活動許可を受けていない留学生を働かせた場合などが該当します。

◆在留資格で許可されていない業務をさせた場合

在留資格で認められた活動や時間の範囲を超えて外国人を働かせた場合、不法就労助長になります。在留資格で認められていること以外の仕事をさせることや、在留資格で認められている時間を超えて働かせる場合が、それに当たります。

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人に単純労働をだけを担当させると、不法就労助長です。特定技能や技能実習も在留資格ごとに定められた業種・職種以外の仕事をさせると不法就労助長です。留学生は資格外活動許可を取れば働けますが、週28時間を超えて働かせると不法就労助長になります。

不法就労助長罪の検挙事例

外国人に不法就労をさせることへの取り締まりは厳しくなっています。公表された検挙事例の一部を紹介します。

記事中の年齢は発表当時のものです。

翻訳・通訳の担当者に交通誘導警備業務

2024年12月、大阪府警などは「ベトナム人を在留資格外の警備員として働かせた」として、大阪市内の不動産会社社長(41)や従業員で採用担当のベトナム人(28)を入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕したと発表しました。

府警によると、社長らは2023年7月まで約2年間にわたって、翻訳・通訳や経理担当などとして雇ったベトナム人を工事現場に派遣し、交通誘導警備の仕事をさせていたとされます。社長から依頼されて虚偽の書類を入管に提出したとして、担当の行政書士(46)も書類送検されました。

不法残留の外国人に飲食品配達/ウーバーと経営者を逮捕

警視庁は2021年6月、不法残留している外国人に配達業務をさせたとして、飲食品宅配サービス「ウーバーイーツ」を運営する「ウーバージャパン」(東京都港区)の当時の代表の女性(47)とコンプライアンス担当だった元社員の女性(36)、法人としての同社を入管法違反(不法就労助長)容疑で書類送検しました。容疑は2020年6月~8月、不法残留していたいずれもベトナム人の男性(30)と女性(24)を都内で配達業務に従事させたとされます。

ベトナム人の2人は同法違反(不法残留)容疑で2020年9月に逮捕されました。同社配達員として登録するには、インターネットの専用サイトで身分証や写真を提出してアカウントを作成しなければなりませんが、この2人は有効な在留カードを持っていなかったため、他人の在留カードや写真を使って作成したアカウントをブローカー経由で利用しました。ウーバー側は面接など適切な身分確認を行なわずにこの2人に配達業務をさせたとのことです。

警視庁は2019年以降3回、同社に外国人配達員の在留資格について指導し、翌年、不法残留や不法就労(資格外活動)などの容疑で計184人の外国人配達員を摘発していました。

留学生にオーバーワークをさせたとしてラーメンの一蘭を送検

大阪府警は2018年3月、全国でラーメン店を展開する「一蘭」(福岡市)が大阪市内の2店舗で外国人留学生10人に許可された時間を超えてアルバイトをさせたとして、社長(53)と労務担当責任者の女性(39)、店長ら計7人と、法人としての同社を入管法違反(不法就労助長)などの疑いで書類送検しました。この留学生10人も書類送検されました。

社長らは2017年9月~11月、2店舗でベトナムや中国からの留学生10人(20~27歳)に法定の上限時間(週28時間)を超えてアルベイトをさせた疑い。最長で週39時間以上働かせたとのことです。

社長については、留学生を雇ったのに名前や在留期間などをハローワークに届け出ていなかったとして、雇用対策法違反(外国人雇用の無届け)の疑いでも書類送検されました。

人材派遣や業務委託も不法就労助長罪の対象

人材派遣で不法就労をさせ、不法就労助長容疑で逮捕

不法残留で日本に滞在していた元技能実習生などのベトナム人5人を水産加工会社に派遣して働かせたとして、人材派遣会社の担当者5人が2020年に入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕されました。このベトナム人5人も入管法違反(旅券不携帯、不法残留)容疑で逮捕されました。

業務委託で不法就労をさせ、助長罪に問われた事例

上述のウーバーの検挙事例で、配達員は直接雇用ではなく、業務委託で配達を行なっていましたが、配達業務を発注したウーバージャパンは入管法違反(不法就労助長)容疑で送検されました。直接雇用ではなく外国人に業務を委託する場合でも、在留資格や在留期間などの確認が必要です。

外国人を採用するときの確認ポイント

雇った外国人が不法就労であることを知らなかった場合でも、事業者側に確認不足などの過失があれば、不法就労助長罪が適用されます。 在留カードを十分に確認せずに雇用した場合も該当します。在留カードの確認方法について押さえておきましょう。

在留カードで確認するポイント

在留カードには、氏名や生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などが記載されています。採用時には以下のポイントを確認します。

  • 氏名・顔写真:本人かどうか
  • 在留資格:どのような活動(仕事)に従事できるか
  • 就労制限の有無:就労できるかどうか
    →「就労不可」の場合はカード裏面で資格外活動許可の有無を確認
  • 在留期間:在留期限を過ぎていないかどうかなど

在留カード失効情報紹介

在留カード右上の「在留カード番号」と下端の「有効期間」を下記のページに入力すると、その在留カードが有効かどうか、結果が表示されます。

在留カードが失効していない場合の照会結果画面

ただし、実在する在留カード番号を悪用した偽造在留カードも存在します。

偽造在留カードの見分け方

在留カードは偽造されていることもあるので、本物かどうか確認する方法があります。確認するときはコピーではなく現物のカードで以下のポイントなどをチェックします。

  • 顔写真の左隣の「MOJ」の背景色が変化するかどうか。
  • カードを上下に傾けたときに、左端が緑からピンクに変色するかどうか。
  • カードを左右に傾けたときに、顔写真の表面にある「MOJ」のホログラムが動くかどうか。
  • 暗い場所でカードの表から強い光を当てると、「MOJMOJ」というすかし文字が見えるかどうか。

くわしくは下記リンク先の資料や動画をご覧ください。

在留カード等読取アプリ

出入国在留管理庁が無料で配布している「在留カード等読取アプリケーション」を使うと、在留カードのICチップの内容を読み取って、その情報が本当のものかどうかを調べることができます。

不法就労状態が判明したときは

雇用している従業員(アルバイトを含む)が不法就労の状態であることが分かった場合はどのように対応すべきでしょうか。

資格外の仕事をさせたり許可された時間を超えて働かせたりしていた場合

在留資格で認められた範囲外の業務をさせたり、許可された労働時間を超えて働かせたりした場合、不法就労助長となってしまいます。

このような不法就労状態が分かった場合、まず、その従業員の就労を停止させてください。その後の対応については、弁護士や行政書士といった専門家に相談することが望ましいです。

就労できない外国人を雇用していることが判明した場合

採用時の確認不足などが原因で就労できない外国人(不法残留中の外国人など)を雇ってしまったことが後で分かった場合も、すぐに就労を停止させ、専門家に相談してください。

まとめ

このページのまとめ

◎在留資格で認められたこと以外の仕事をすると不法就労活動(入管法違反)になります。在留資格を持たない外国人や在留期限が切れた外国人が働く場合も不法就労です。

◎例えば、「技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)」は原則としてホワイトカラーの仕事を行うための在留資格です。工場などでも働けますが、専門技術・知識を伴う仕事でなければならず、単純作業だけをさせることはできません。

◎不法就労助長罪には3パターンがあります。① 不法滞在の外国人などを働かせた場合 ②就労が許可されていない外国人を働かせた場合 ③ 在留資格で許可されていない業務をさせた場合。

◎人材派遣や業務委託も不法就労助長罪の対象になります。

◎外国人を採用するときは在留カードで、氏名・顔写真や在留資格、就労制限の有無(「就労不可」の場合は資格外活動許可の有無)、在留期間などを確認します。

◎真正な在留カードには識別情報が数点組み込まれています。

-未分類

error: Content is protected !!