
特定技能と技能実習は何が違うのでしょうか。就労できる業務・業種▽ビザの期間▽転職の可否▽日本語力▽受け入れ可能な人数▽コスト――など主な違いについて説明します。特定技能の方が便利な点もありますが、転職自由なので長期定着が必ずしも簡単ではないことや技能実習より給料が高いこと、日本人に賞与を支給する場合は外国人材にも支給が必要な点など、注意点にも触れます。
1分で読める記事の要点〈時間のない方はこちらだけ!〉
ポイント解説

・就労できる業務・業種の違い:特定技能は16分野、技能実習は91職種(168作業)。技能実習の多くの仕事が特定技能にも移行できます。
・在留期間の違い:特定技能1号の在留期間は最長5年。特定技能2号の在留期限は何度でも更新可能。技能実習生1号と2号の在留期間は計3年です。
・転職可能かどうかの違い:特定技能では転職自由。技能実習でも「転籍」できる場合はありますが、通常3年以上働いてくれるのが雇用する側の大きなメリット。
・日本語力の違い:特定技能に必要な日本語試験に合格していても、ほとんど会話できない場合も多いです。特定技能であれ技能実習であれ、教育力のある送出機関から受け入れることが大事です。
・受け入れ可能な人数の違い:特定技能では、介護と建設以外では受け入れ人数の制限がありません。技能実習には、常勤職員数に応じた受け入れ人数制限があります。
・特定技能なら送出機関を使わずにすむ?:特定技能でも多くの場合、その国の海外人材派遣会社(送出機関もその一種)を使わなければならない点は技能実習と同じです。
・コストの違い:
- 技能実習では紹介手数料(謝礼)は不要。特定技能では紹介手数料を請求する業者とそうでない業者があります。
- 技能実習のランニングコスト(監理費+送出管理費)は特定技能の支援委託費より割高。
- 特定技能の給与の方が技能実習より高い。また、日本人にボーナスを支払う場合、特定技能外国人にも賞与支給が必要。
・就労条件の違い:特定技能1号になるには日本語能力試験N4相当の合格と技能試験への合格が必要。技能実習にはそのような要件はありません。
・家族帯同の可否:技能実習や育成就労、特定技能1号では家族帯同が認められていません。特定技能2号では、条件を満たせば、配偶者と子の帯同が可能。
◆このページの内容
- ポイント解説〈時間のない方はこちらだけ!〉
- 制度目的の違い
- 就労できる業務・業種の違い
- 在留期間の違い
- 転職可能かどうかの違い
- 受け入れ可能な人数の違い
- 日本語力の違い
- 特定技能なら送出機関を使わずにすむ?
- コストの違い
- その他の違い
- まとめ
制度目的の違い
「特定技能」と「技能実習」では制度の目的が違います。
特定技能 |
2019年施行。人材確保が困難な特定の産業分野で、一定の専門性・技能を持ち戦力となる外国人を受け入れて人手不足を解消する。 |
技能実習 |
1993年施行。技能移転を通じた開発途上国への国際協力。 |
特定技能は人手不足を補うための制度
特定技能は人手不足を補うための制度です。「技術・人文知識・国際業務」など就労ビザの外国人材は外食業・建設業・農業・宿泊業・製造業などで単純労働に従事させることが原則としてできないので、特定技能で単純労働の人手不足を補うことにしました。
技能実習は技術移転による国際貢献
一方、技能実習は開発途上国への技術移転を通じた国際貢献が目的です。名目上は、日本で学んだ技能・技術・知識を母国に持ち帰り、母国の発展に役立ててもらうことが目的です。しかし、実際には大半のケースで人手不足を補う労働力として使われてきたため、実態との乖離が指摘されていました。このため、後継として2027年から導入される育成就労制度の目的は「人手不足分野における人材確保及び人材育成」となりました。
就労できる業務・業種の違い

特定技能と技能実習では就業可能な分野や業種が違います。
特定技能1号で就労できる産業分野 |
人手不足が深刻な16分野(特定技能2号はこのうち11分野) |
技能実習で就労できる職種 |
91職種168作業(2025年3月現在) |
特定技能は16分野、技能実習は91職種(168作業)あり、技能実習は業務内容が細かく分かれています。特定技能では技能実習に比べて幅広い業務に従事できます。また、技能実習の中の多くの仕事が特定技能にも移行できます(移行できない仕事もあります)。
外国人材を募集する前に、登録支援機関や監理団体などに相談して、特定技能や技能実習でできる仕事かどうかを判断してから手続きを始めます。
在留期間の違い
「技能実習」と「特定技能」では在留できる期間が違います。
特定技能の在留期間 |
特定技能1号:最長5年 |
技能実習の在留期間 |
技能実習1号:1年 |
育成就労の在留期間 |
育成就労:3年 |
特定技能の在留期間
特定技能1号の在留期間は最長5年です。その後、日本語力などの条件をクリアして特定技能2号に移行すれば、在留期間の更新回数に制限がなくなります。
特定技能ができるまでは、技能実習満了後の技能実習生は帰国するしかありませんでした。しかし、今は、在留資格を技能実習から特定技能に切り替えることが可能です。
技能実習や育成就労の在留期間
技能実習生は通常3年以上働きます(技能実習1号=1年、2号=2年、3号=2年)。ただし、育成就労導入後は、3号がなくなり、1号の新規受け入れもなくなります。
後継制度である育成就労の在留期間は原則3年です。
転職可能かどうかの違い

特定技能では転職自由
特定技能では転職自由です。別の分野に転職する場合は、その分野の技能試験に合格することが必要です。転職が自由なため、技能実習と比べると長期定着は難しくなります。
技能実習でも「転籍」はできる
技能実習では転職できませんが、同じ職種で他社に「転籍」はできます。ただし、それは受け入れ事業者の労働法令違反や倒産、実習生がどうしても職場になじめないなど「やむを得ない事情」がある場合だけです。
しかし、大半の実習生は3年以上働いてくれますので、受け入れ事業者にとっては長期安定雇用が技能実習の最大の魅力となっています。
技能実習から特定技能に移行する際、他社に転職することもできます。しかし、もし自社内で移行してもらえれば、技能実習の3年以上に特定技能1号の最長5年を加えて計8年以上の継続雇用を期待することができます。特定技能2号に移行できた場合はさらに長く継続雇用できます。
特定技能 |
転職自由なので長期定着するとは限らない |
技能実習 |
やむを得ない事情がある場合は「転籍」可能だが、大半のケースで3年以上継続雇用できるのが最大のメリット |
受け入れ可能な人数の違い
特定技能では、介護と建設分野以外では受け入れ人数の制限がありません。
一方、技能実習には、常勤職員数に応じた実習生の受け入れ人数制限があります。適切な指導ができる人数として、下の表のような受け入れ人数枠が定められています。ただし、優良な受け入れ事業者に認定されると、受け入れ枠が拡大します。
◆技能実習生の受け入れ人数枠
常勤職員数 | 技能実習生の人数枠 | |
| 技能実習1号 | 技能実習2号 | |
| 30人以下 | 3人 | 基本人数枠の2倍 |
| 31~40人 | 4人 | |
| 41~50人 | 5人 | |
| 51~100人 | 6人 | |
| 101~200人 | 10人 | |
| 201~300人 | 15人 | |
| 301人以上 | 常勤職員の20分の1 | |
日本語力の違い

特定技能外国人になるためには原則として日本語能力試験(JLPT)N4相当の日本語力が必要です。このため、「特定技能外国人は技能実習生より日本語力が高い」とされています。しかし、実際には、1号特定技能外国人の日本語力は個人差が非常に大きいです。
日本で技能実習を経験した人や元留学生には日本語力の高い特定技能外国人も多いですが、そのような人材は人数に限りがあります。このため、海外で募集した外国人材が母国で日本語を勉強してから初めて来日するケースが増えています。その場合、必要な日本語試験に合格していても、ほとんど会話ができない人材が非常に多いことに留意してください。試験合格と会話力は別ものです。
特定技能、技能実習を問わず、それなりの日本語力を身に付けた海外人材を採用するには、教育力の高い送出機関を見つける必要があります。平均的な送出機関であれば、特定技能外国人も技能実習生も日本語会話力はそう大きくは変わらないと考えてください。
特定技能なら送出機関を使わずにすむ?
技能実習生は基本的に海外の送出機関と提携している日本の監理団体を通して受け入れる必要があります。しかし、特定技能では送出機関を通す必要はありません(ただし、認定送出機関の利用を義務付けている国もあります)。
このため、「送出機関を使わずにすむことが特定技能のメリット」とする記事も見かけます。しかし、海外から人材を受け入れる場合は通常、その国の海外人材派遣会社(送出機関もその一種)に現地での人材募集や教育などを担当してもらう以外に方法がありません。
海外人材派遣会社の一部が日本の技能実習制度との関係で「送出機関」に認定されているだけです。特定技能でも、「送出機関」かどうかは別にしてその国の海外人材派遣会社を使わなければならない点は技能実習と同じです。
コストの違い

特定技能では多くの場合「紹介手数料(謝礼)」が発生
特定技能の紹介手数料
◎日本の人材紹介会社を通じて特定技能外国人を採用する場合、5~30万円の紹介手数料(謝礼)が必要な場合が多いです。
◎しかし、登録支援機関を通じて採用する場合、紹介手数料を取らない支援機関もたくさんあります。
このことを知った上で依頼先を選んでください。
技能実習の紹介手数料
◎技能実習では紹介手数料は不要です。
特定技能と技能実習の主な初期費用
入管関連などの手続き費用を除く特定技能・技能実習の主な初期費用には次のようなものがあります。くわしくは下記の関連記事をお読みください。
特定技能1号(国内人材)の初期費用
- 紹介手数料(必須)
- 引越費用
特定技能1号(海外人材)の初期費用
- 紹介手数料:人材紹介会社の場合は大半のケースで必要。登録支援機関は不要のケースも多い。
- 講習委託費(海外での教育費用)
※日本経験者については減額 - 渡航費
技能実習の初期費用
- 紹介手数料:不要
- 渡航費
- 入国後講習に関する費用
特定技能と技能実習のランニングコスト
サポート費用
特定技能では外国人材に対して支援計画に基づく支援が必要で、それを登録支援機関に委託する場合は支援委託費が毎月必要です。これは毎月1人20,000円~30,000円が相場です。
技能実習では監理団体を使わなければならず、監理団体への管理費と送出機関への送出管理費が毎月必要です。これらの合計額は毎月1人30,000円~55,000円ですが、地域によって平均相場が大きく異なります。
人件費
特定技能外国人は技能実習より少し高い給与設定が必要です。同じ会社内であれば、実習生より基本給だけで15,000~20,000円高い場合が多いです。
また、日本人に賞与(ボーナス)を支給している場合、特定技能外国人にも同様の賞与を支払わなければなりません。
技能実習生にはそのような決まりはありません。
その他の違い

就労条件の違い
特定技能1号になるには日本語能力試験(JLPT)N4相当の日本語試験合格と希望の産業分野の技能試験への合格が必要です(技能実習から同じ業種で特定技能に移行する場合は試験免除)。
技能実習ではそのような要件はありません。
家族帯同の可否
日本で長く働き暮らしたいと考えている外国人材にとっては、家族を日本に連れてこられるかどうかは大事なポイントです。
技能実習や育成就労、特定技能1号では家族帯同が認められていませんが、特定技能2号では、要件を満たせば、配偶者と子の帯同が可能です。
技能実習・育成就労 |
家族帯同はできない |
特定技能1号 |
家族帯同はできない |
特定技能2号 |
配偶者と子の帯同は認められる |
まとめ
このページのまとめ
・就労できる業務・業種は、特定技能は16分野、技能実習は91職種(168作業)
・特定技能1号の在留期間は最長5年。特定技能2号は実質無期限。技能実習は多くの場合計3年。
・特定技能では転職自由。技能実習でも「転籍」できますが、多くの場合3年以上働きます。
・特定技能になるために必要な日本語試験に合格していても、ほとんど会話ができない海外人材が多いです。
・特定技能では、介護と建設以外では受け入れ人数の制限がありません。技能実習には、常勤職員数に応じた受け入れ人数制限があります。
・特定技能でも通常、その国の海外人材派遣会社(送出機関もその一つ)を使わなければならない点は技能実習と同じです。
・技能実習では紹介手数料(謝礼)は不要。特定技能では紹介手数料が発生する場合も多いです。
・技能実習の監理費は特定技能の支援委託費より割高ですが、給与は特定技能の方が技能実習より高いです。日本人にボーナスを支給している場合、特定技能外国人にも支給しなければなりません。
・特定技能1号になるには日本語能力試験(JLPT)N4相当の日本語試験と技能試験への合格が必要です。
・技能実習や育成就労、特定技能1号では家族帯同ができません。特定技能2号では、条件を満たせば、配偶者と子の帯同が可能です。