採用ノウハウ

〈外国人材採用の裏側〉送出機関は特定技能と技能実習の候補者をどうやって振り分けるのか?

日本の監理団体や登録支援機関などを通じて海外の人材会社(送出機関など)に特定技能や技能実習の求人を出すと、候補者が紹介されて採用面接を行なうことになります。その際、送出機関はどのような基準で特定技能の候補者と技能実習の候補者を振り分けているのでしょうか?複数の送出機関に取材しました。

◆このページの内容

同じ生徒が特定技能にも技能実習にも応募

ベトナムの送出機関の教室

私はインドネシアやベトナム、ミャンマーなどの複数の送出機関経営者と日常的に情報交換をしています。また、取材先の日本の会社から頼まれて外国人材の面接に立ち会って助言することもあります。

そのようなことを日々行なっているうちにあることに気付きました。インドネシアの送出機関で、ある日本企業の技能実習の面接を受けて選ばれなかった生徒(人材)が後日、別の企業の特定技能の候補者にリストアップされていたのです。

送出機関の社長に確認すると、「特定技能しか嫌だという生徒には特定技能の求人しか紹介しないが、どちらでもよいという生徒には、特定技能も技能実習も紹介している」との説明でした。

また、インドネシアの多数の人材に取材したところ、大卒の生徒は特定技能以外には行きたがらず、高卒の生徒の多くは特定技能でも技能実習でも良いという傾向がありました。

日本語試験の合格者や受かりそうな人が特定技能に応募

コンピュータを使って日本語試験対策の問題を解く送出機関の生徒たち

もちろん、必要な日本語試験(JFT-Basic A2レベルかJLPT N4レベル)と特定技能試験に合格しないと特定技能外国人にはなれませんので、勉強が苦手で日本語試験に受かりそうもないという人材は特定技能の求人に応募しませんし、送出機関も応募させません

これについて、送出機関は次のように対応しています。

① 特定技能の求人を受けてから、自国に帰国して住んでいる元技能実習生(特定技能の日本語試験不要)を募集する。

② すでに何カ月か日本語学習を続けている生徒がいる場合、特定技能に必要な日本語試験に合格した生徒か将来合格しそうな生徒(送出機関での成績が良い生徒)に特定技能の採用面接を受けさせる。

外国人材が求人に応募する際の判断基準とは?

それでは、それなりの日本語力に達した人材がすべて特定技能の求人に応募するのかというと、そうではありません。

「特定技能の方が技能実習より上」というとらえ方しかしていない人材は特定技能に固執する傾向がありますが、実は技能実習には特定技能にはない例えば次のようなメリットがあり、それに気付いている外国人材も多くいます

  • 技能実習から始めれば、(特定技能2号になれない場合でも)技能実習と特定技能1号を合わせて日本で計8年間働ける。
  • 一般の労働法令以外に技能実習法の保護を受けられる。具体的には、職場で不当な扱いを受けた場合などに監理団体や外国人技能実習機構に相談して対処してもらえる、など。

また、同じ職場では特定技能の方が技能実習より給与が高い(同じ職場で15,000~20,000円ぐらい高い場合が多い)ものの、低賃金の会社の特定技能より高賃金の会社の技能実習の方が給与が高い場合もあります

送出機関がこうした事柄を外国人材にしっかりと説明している場合、優秀な人材も技能実習にたくさん応募します。その場合、外国人材は特定技能か技能実習かという違い以外に次のような要素を勘案して求人に応募するかどうかを決めます。

  • 給与・賞与
  • やりたい仕事かどうか
  • 職場の評判(先輩の間での評判)
  • 寮の内容や立地
  • 職場の立地

特定技能か技能実習かにあまりこだわらない人材はたくさんおり、その人たちは自分にとって良い条件の求人が来れば、技能実習であっても応募します。

求人を出す企業から見れば、求人条件とタイミングが良ければ、技能実習でも優秀な人材に応募してもらえるということになります。

優秀な人材が技能実習に応募した事例

私がオンラインで立ち会った採用面接である果樹園が採用したインドネシア人の女性技能実習生2人は非常に優秀で、日本に入国した時点で1人が日本語能力試験(JLPT)N3合格まであと5点、もう1人があと10点でした。特定技能に必要な日本語力はN4なので、彼女たちはそれよりずっと高い日本語力を身に付けて来日したのです。

この2人はインドネシアで10カ月以上勉強してから来日しました。本人たちの努力に加えて、送出機関も良い教育を長期間、提供してくれたことが幸いでした。彼女たちは来日当初から通訳なしで仕事の指示を理解でき、勤務姿勢も積極的なので、受け入れた会社はとても喜んでいます。

また、私が担当している技能実習の入国後講習の授業で、私が話す日本語を通訳者が通訳する前に半分ぐらい理解できるミャンマー人の技能実習生たちも母国で10~13カ月勉強してから来日していました。

先に合格した人が実習生、残った人が特定技能という事例

ところで、上記のインドネシア人実習生2人と一緒に果樹園の面接に参加して選ばれなかった人材がその後どうなるかフォローしていたところ、さらに2カ月以上就職先が決まらない人も多かったのですが、そのうち2、3人は必要な日本語試験に合格して別の企業の特定技能の採用面接を受け、合格しました。

彼女たちも優秀でしたが、果樹園の面接で先に採用された2人の評価が断トツだったことを考えると、「特定技能の求人には技能実習より優秀な人が集まる」ということは一概には言えないと改めて実感しました。

優秀な外国人材を得るには、特定技能か技能実習かということより、給与・賞与や仕事の内容、先に雇用している外国人材(先輩たち)の間での評判などがより大事だと考えてください。

まとめ

このページのまとめ

・送出機関によると、「特定技能しか嫌だという生徒には特定技能の求人しか紹介しないが、どちらでもよいという生徒には、特定技能も技能実習も紹介している」とのことです。

・必要な日本語試験と特定技能試験に合格しないと特定技能外国人になれないので、勉強が苦手で試験に自信がないという人材は特定技能の求人に応募しませんし、送出機関も応募させません。

・特定技能と技能実習の長所・短所を十分に理解している人材は、特定技能か技能実習かという違いだけでなく、▽給与・賞与▽やりたい仕事かどうか▽職場の評判(先輩外国人材の間での評判)▽職場の立地▽寮の内容や立地――などを勘案してその求人に応募するかどうかを判断します。

・技能実習の採用面接に落ちた人がその後、日本語試験に受かって他社の特定技能の採用面接を受け、採用された事例もあります。また、特定技能に必要なレベルをはるかに上回る日本語力を身に付けて来日した技能実習生もいます。

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