事例インタビュー

〈現地レポート〉ベトナム送出機関視察 - 2026年2月

2026年2月から3月にかけてベトナムに出張し、送出機関3社を訪問調査しました。現地取材に基づいて、生徒たちの日本語力や、これらの機関が受け取る日本からの求人の給与相場、ベトナムでの最新の人材募集事情などをレポートします。

◆このページの内容

外国人材募集の手順

技能実習生や特定技能外国人を海外から採用する場合、多くのケースでは、日本側の監理団体(主に協同組合)や登録支援機関が現地の送出機関に人材募集と教育を依頼します。その後、送出機関が集めた候補者に対して受入企業が面接を行い、採用者を決めます。ベトナムの場合、合格者はそれから本格的に日本語を学習し、面接の約半年後に来日するのが一般的です。

送出機関の選び方

送出機関を選ぶうえで重要なのは主に次の3点です。

  • 生徒募集力
  • 日本語教育力
  • 送出事業に対する考え方(儲け主義か教育重視かなど)

筆者は事前の調査や情報でこうした基準を高いレベルで満たしていると予想される送出機関だけを選んで訪問調査を重ねています。

送出機関A(所在地:ハノイ)

今回訪問した3社について順に紹介します。まずはハノイの老舗送出機関A社です。

同社は1991年創業の大手送出機関グループに属していますが、生徒募集や求人開拓は独自に行っています。一方、日本語教育については親会社と同一施設で実施しています。

生徒募集力

A社はハノイ(ベトナム北部)にありますが、生徒はベトナム中部の人が中心です。A社はどのようにして外国人材を集めているのでしょうか?

まず、ベトナム内務省の地方組織から人材を紹介してもらっています。また、国軍とも連携し、徴兵義務を終えた若者を多数受け入れています。さらに、高校での説明会も多数行っています。このようにブローカーに頼らない安定した募集ルートを持っており、募集力は非常に安定している印象でした。

ベトナムでの人材募集に関する良い変化

内務省の地方組織からの人材紹介については、従来は一部の大手送出機関に限定される傾向がありました。しかし、近年の行政改革により、中小の送出機関も人材を紹介してもらえるようになったとのことです。日本からの求人が減り、大手だけでは希望者に十分な機会を提供できなくなっている事情もあると考えられています。

もともと行政から人材紹介を受けていたA社としては、その点では他社より優位に立つことはできなくなりましたが、ベトナムの送出機関全体にとっては良い環境変化です。

求人の給与相場

A社が扱う日本の求人の給与相場についても聞きました。

この中で「手取り給料」とは額面給料から税金、社会保険料、寮費(最大2万円程度)を差し引いた振込額を指します。

  • 建築(とび、型枠):手取り19万~20万円が最低ライン
  • その他の建築(鉄筋施工など):上記よりやや低くても募集可能
  • 食品加工(人気職種):手取り18万~19万円(首都圏)、14万~16万円(地方)

ベトナムドンでの給与相場は数年前と比べてそれほど上がっていないのですが、円安が進んだため円ベースでは以前よりかなり相場が上がったとのことです。

生徒から受け取る費用

  • 約3,600 USD相当(ベトナムドンで受け取り)

A社の場合、ここに送出手数料に加え日本語教育費や教材費、寮費も含まれています(食費は別)。

面接等

  • 最近のベトナムの送出機関の通例で、面接前の日本語教育はほとんど行っていません。
  • 応募倍率は平均2~2.5倍
  • 日本語学習開始から来日までは約6カ月

大口取引先の場合は約2カ月までの延長に対応することもあります。

生徒の日本語力

日本語学習を始めて5~6カ月のクラスを見学し、約10人と会話しました。ゆっくり明りょうに話すと、多くの生徒が内容の半分以上を、理解力の特に高い生徒は7割程度を、それぞれ理解していました。
筆者は定期的に入国後講習で各国の技能実習生と接していますが、ここ2年ほどは、ベトナム人材の日本語理解力がミャンマーやインドネシアに比べて低い傾向を感じていました。しかし、A社の生徒たちは私が普段接する各国の実習生の中でも上位レベルに近い日本語力を有していました。

送出機関B(所在地:ベトナム南部)

次にベトナム南部のB社です。

生徒の日本語力

5~6カ月勉強した人たち約10人と会話したところ、A社とほぼ同等の日本語会話力でした。B社の授業は1日8時間で、さらに自宅や寮で1~3時間の自習を行っています。

面接等

B社の特徴は、1~2カ月間の日本語学習を終えた段階の生徒を面接できるという点です。

現在のベトナムでは「日本からの求人提示→生徒募集→面接→日本語学習開始」という流れが一般化しており、面接前に一定期間の教育を行う機関は非常に少なくなっています。そのため、B社のシステムには希少性があります。

訪日までの総学習期間は7~8カ月と、平均(5~6カ月)より長く設定されています。日本語教育は来日前が最も重要であるため、この点は大きな強みです。

実際に、B社では技能実習であっても約6割の生徒が特定技能に必要な日本語試験(JLPT N4またはJFT-Basic A2)に合格してから来日しています。

生徒募集力

B社の生徒は内務省地方組織からの紹介や徴兵義務明けの生徒が中心です。

入学の際に知能テストは行いませんが、面接に時間をかけて性格や思考力を見きわめてから入学させます。「素直な性格の子の方が受け入れ事業者が雇いやすいので、そこをしっかり見きわめています」とのことです。

生徒から受け取る費用

  • 7,900万 VND(ベトナムドン=約47万8000円)

※ここに送出手数料と教育費が含まれますが、寮費(月20万VND)や食事代、教科書代は別です。

求人の給与相場

  • 食品加工:手取り約17万円(勤務地・神戸)
  • 溶接:手取り約18万円
  • 型枠:手取り約18万円

※参考:B社はフランスにも人材を送り出しています。

  • 溶接:手取り42万円

送出機関A(所在地:ホーチミン)

3つめはホーチミンの送出機関です。小さい規模ながら優秀な教師陣がそろっているのが特徴です。

生徒の日本語力

約6カ月勉強した生徒3人と話をさせてもらいました。その中の1人の会話力は私の感触でN2相当(日本語能力試験5段階の上から2つめのレベル)で、やや複雑な日本語も十分に理解し返事もできました。ほかの1人はN3レベル、もう1人はN4とN3の間という印象でした。分かりやすい日本語で話すと、1人は7~8割程度、あとの2人も5~6割は理解できていました。

この3人の日本語会話力はA・B社の学習期間5~6カ月の生徒たちの平均より上でした。

生徒募集力

C社の生徒募集は少し前まで、ベトナムの大半の送出機関と同様にブローカー依存型でしたが、現在は内務省地方組織から生徒を紹介してもらえるようになり、募集力が大きく改善されたとのことです。これはA社への取材内容とも合致します。

まとめ

送出機関A社の食堂

このページのまとめ

今回、ベトナムの送出機関3社を訪問しました。その結果、優秀な送出機関では良い生徒を集めてしっかり教育することが再び可能となっていることが分かりました。

2027年開始予定の育成就労制度では、日本語要件を満たさない場合、「相当講習」や追加教育(登録日本語教員による100時間以上の講習)が必要となり、受入企業のコスト負担が増加します。

一方、入国時点でN4相当の日本語力を確保できれば、これらの追加コストをすべて回避することができます。

技能実習・育成就労・特定技能のいずれにおいても、適切な送出機関の選定は受入企業にとって大きなメリットをもたらします。

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