採用ノウハウ

〈外国人採用の裏側〉外国人材業界の「ブローカー」とはどんな人たち? ブローカーの役割や弊害について説明します。

技能実習制度に関するニュースや記事で「ブローカー」という言葉をよく見聞きします。「ブローカーに支払うお金が多額なため、技能実習生の負担額が大きくなり、多額の借金を背負うことになる」という報道です。技能実習生の借金がふくらむのはブローカーへの謝礼だけが原因でありませんが、ブローカーの弊害が大きいのも確かです。外国人材の紹介をめぐるブローカーとはどういう人で、どのような弊害があるかを説明します。

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ポイント解説

◎外国人材業界における「ブローカー」とは、謝礼と引き換えに人材を外国の人材会社に紹介する人のことです。具体的には個人(町の有力者や行政・教育関係者、元技能実習生など)や日本語学校・教室の経営者などを指します。

◎ベトナムのハノイの送出機関の場合、候補者紹介1人に対するブローカーへの謝礼は1,000~1,500ドル、ホーチミンの場合は1,000ドルが相場です(2024年度)。求人内容や経済環境によっても変動します。

◎外国の人材会社(送出機関等)がブローカーに支払う謝礼は、最終的には人材(技能実習生や特定技能外国人など)の負担に上乗せされています。

◎日本の監理団体等へのキックバックや接待にブローカー費用を上回る費用が発生するケースもあります。こうしたコストも外国人材に転嫁されます。

◎人材会社と人材の両方から二重に謝礼を受け取る悪質なブローカーもいます。

◎労働条件について虚偽の説明をして人材を集めるブローカーもいます。こうして集められた人材は来日後に労働条件の不一致に気付き、強い不満を持ちます。

◎ブローカー費用を安く抑え、実習生に過度の負担をさせない人材会社(送出機関等)もあります。そのような人材会社を見つけることが大切です。

◆このページの内容

ブローカーは普通の人たち

親せきや知人に子どもの技能実習を勧めるブローカーも多い

一般に、謝礼をもらって取引の仲介をする人のことをブローカーと言いますが、外国人材業界におけるブローカーとはどういう人たちでしょうか?

送出機関を含む外国の人材紹介会社が海外に送り出す人材(技能実習生、特定技能外国人、その他)を集める主なルートとして、下記のようなものがあります。

①個人
②日本語学校・教室
③高校・専門学校・大学等
④行政による説明会
⑤自社の在校生や卒業生からの紹介
⑥インターネット(SNSなど)

このうち「①個人」については、人材会社が行政や教育の関係者、町の有力者、フリーランスの個人などに有料で依頼して人材を集めています。このように、謝礼と引き換えに、人材を探して人材会社に紹介する人のことを「ブローカー」と呼ぶ場合があります。元技能実習生にも送出機関に人材を紹介して謝礼をもらっている人が多く、これもブローカーの一種です。

また、「②日本語学校・教室」も日本に送り出す人材を集める重要ルートになっており、学校・教室の経営者は「ブローカー」の中でも中心的な存在です。

ただし、ブローカーは技能実習制度に限ったものではありません。人材紹介会社は特定技能外国人や一般の就労ビザで働く人材の募集も人材募集業者(ブローカー)に依頼することが多く、どの外国人材の募集にもブローカーが介在しています。

ブローカーへの謝礼の相場は?

ベトナムの送出機関数社によると、人材募集業者(ブローカー)に技能実習生の紹介を依頼する場合、紹介1人あたりの謝礼は500~1,500ドルの場合が多数です(2024年現在)。

① ブローカーへの謝礼の相場(ベトナム)

ハノイの送出機関:紹介1人につきブローカーに1,000~1,500ドル

ホーチミンの送出機関:紹介1人につきブローカーに平均1,000ドル(ハノイより少し安い)

求人内容による変動:謝礼の相場は、その求人が人気業種か不人気業種か、給料はいくらか、といった要因で差があります。

経済環境等による変動:人材送出国が好景気で、外国で出稼ぎをしたい人材が少ない場合などは、人集めが難しいのでブローカーに対する謝礼が高くなります。

② ブローカーへの謝礼の支払方法(ベトナム)

・多くの場合、謝礼額は米ドルベースで決めます。
・ブローカーが紹介した人材が企業面接に合格した後や出国した後などに、謝礼を現金で支払うことが多いです。
・支払通貨はベトナムドン(契約した米ドル額に相当する額)の場合もあれば、米ドルの場合もあります。

ブローカー利用による外国人材の負担増

フィリピンではブローカーを使いませんが、インドネシアでは、日本語学校経営者(ブローカー)に技能実習や特定技能の候補者紹介を依頼することも多いです。そして、ベトナムでは、海外に送り出す人材の最大の募集ルートがブローカー(個人事業者と日本語学校・教室の経営者)です。「ブローカーを排除し、社内の募集部だけで人材を集めています」と説明する送出機関もありますが、実は募集部がブローカーとつながっているケースもあります。

① 人材へのコスト転嫁

多くの人材会社(送出機関等)が、ブローカーに支払う多額の謝礼を技能実習生や特定技能外国人にすべて転嫁しています。来日前の実習生の負担額が一番多いベトナムでも、実習生から徴収できる費用は法律等で定められています。しかし、実習生に渡す領収証には規定の金額だけを記し、実際にはずっと多くの費用を支払わせるという実態がはびこっています。

また、実習生や特定技能外国人に転嫁されるのはブローカーへの謝礼だけではありません。日本の監理団体等へのキックバックや接待でそれ以上にお金がかかるケースも多く、その費用も採用された外国人材から集める費用に上乗せされています。

② ブローカーの二重取り

ブローカーによっては、人材会社(送出機関等)から謝礼をもらう以外に、紹介した人材からも別に謝礼を受け取ります。入管庁が各国からの実習生に行った調査(2022年公表)によると、1,572人が「送出機関のみに支払った」と回答したのに対し、「送出機関と仲介者の両方に支払った」または「仲介者のみに支払った」と回答した人が242人もいました。

③ 外国人材に負担を転嫁しない送出機関も

技能実習生などの外国人材がこのように不合理な費用を負担させられ、来日前に借金がふくらむと、働き始めてもお金にばかり関心が集中し、高いパフォーマンスを発揮することが難しくなります。

ただし、中には、謝礼が安いブローカーを確保して実習生等にコストを転嫁せず、比較的小さな借金で日本に送り出している人材会社(送出機関等)もあります。人材会社がブローカーを使っているかどうかよりも、ブローカーをきちんと選択・管理し、謝礼額を抑え、二重取りも防止できているかどうかが大事です。

ブローカーの虚偽説明による弊害

ブローカーによっては、紹介謝礼を増やすことに執心するあまり、求人条件を正確に伝えずに人材募集をすることがあります。多いのは、給料や仕事内容に関するうその説明です。

求人票に記載されている給料を改ざんする▽求人票に記載されている給料以外に残業代が安定的にたくさんあるとうその説明をする▽仕事の内容や仕事環境についてうその説明をする――といった内容です。

ブローカーはこれによって不人気の業種や求人に対しても応募者を獲得し、送出機関から謝礼を受け取りますが、その人材が日本で実際に働き始めると事前説明と違うことに気付き、不満や失踪、パフォーマンス低下の原因になります。「事前に聞いた給料や仕事内容と違う」という不満は外国人材の間で非常に多いので、気をつけてください。

このような労働条件の不一致を防止するためにも、求人票や面接で給料や仕事内容について丁寧に説明することが大事です。ただし、中には送出機関の通訳を手なづけて虚偽の通訳をさせるブローカーもいるので、要注意です。

ブローカー以外の募集ルートについて

高校・専門学校・短大・大学から人材を紹介してもらう場合も、まったくの無償で紹介を受けられることは基本的にはありません。例えば、こうした学校ルートからの募集が多いインドネシアでは、高校・大学等に日本語授業を無償で提供(教師派遣)するなど何らかの便宜を提供して人材紹介を受けていることが多いです。また、校長や教師に謝礼が支払われる場合もあります。

インターネット(ウェブサイトやSNS)を募集の中心にすえている人材会社(送出機関等)もあります。この場合もネット広告やSNS投稿の拡散に多額の費用がかかります。ネット広告等のコストパフォーマンスが悪いと、外国人材から集める費用を増やさざるを得ない場合もあります。

一方、自社から輩出した人材やこれから日本に行く人材の友人・知人が多数集まってくる場合、その人材会社は募集コストが安く、生徒(人材)からの評判も良いということになります。

まとめ

このページのまとめ

この記事では、外国人材業界におけるブローカーとはどういう人たちで、ブローカー依存によってどのような弊害があるかを紹介しました。ブローカーへの多額の謝礼を最終的に外国人材に負担させることや、ブローカーが求人内容について虚偽の説明をすることなどが、来日後、外国人材が待遇や仕事内容に大きな不満を持つ要因になっています。

外国人材を受け入れる場合、送出国の人材紹介会社が本人(外国人材)に過度の費用負担をさせていないか、本人に求人内容が正確に伝わっているかなどをチェックする必要があります。このような懸念をできるだけ小さくするためにも、良い人材会社(送出機関等)を見つけて取引をしたいものです。

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