採用ノウハウ

〈外国人採用の裏側〉面接の通訳はこの点に注意!

特定技能外国人や技能実習生(新制度では育成就労外国人)を海外から日本に雇い入れる場合、受け入れ事業者の社長や幹部が現地に赴いたり、オンラインで応募者たちと面接したりして、採用する人を決めます。海外の応募者たちに採用面接をする際、たいていの場合は間に通訳者を入れます。その通訳者は外国の人材会社(送出機関等)が提供することが多いですが、人材会社の通訳には留意点があります。

1分で読める記事の要点〈時間のない方はこちらだけ!〉

ポイント解説

◎海外から雇用した特定技能外国人や技能実習生に関して多いトラブルは、彼らが来日前に聞いていた労働条件(仕事内容や給料等)と実際の労働条件が違うという事柄です。

通訳能力の限界や通訳の使い方の問題による面接時のミスコミュニケーションが労働条件に関する誤解を生み出す一因にもなっています。

◎さらに、人材会社側が労働条件に関して意図的に間違った通訳を行うこともあります。ひどい場合は、面接の際にブローカーが人材会社の通訳者に言い含め、虚偽の通訳をさせる場合もあります。1人でも多く送り出して手数料を多く稼ぎたいという思惑があるからです。

◎求人や面接に関するミスコミュニケーションを防ぐには、①良い送出機関や監理団体を選ぶ ②自前の通訳者(チェック通訳)を入れる ③仕事内容に関する動画を見せて説明する――といった方法が効果的です。

◆このページの内容

特定技能や技能実習で一番多いトラブルとは?

海外から雇用した特定技能外国人や技能実習生に関して多いトラブルは、彼らが来日前に聞いていた労働条件(仕事内容や給料等)と実際の労働条件が違うという事柄です。

最も多いのは、事前に聞いていた仕事内容と実際とが違うというトラブルです。例えば、農業で、ビニルハウス内での仕事が中心だと聞いていたのに、実際に日本に来てみると、ハウス内での労働はわずかで、ほとんどが炎天下や寒風の中での仕事だった、というようなケースです。

また、手取り給料に関するトラブルも多いです。例えば、求人票に書いていない残業代について、送出機関やブローカーが「求人票には書いていないが、先輩たちは平均で月に5万円ぐらいの残業代をもらっている」というようなウソの説明を行ったとします。ところが、日本に来てみると、5万円の残業代は年に1、2回だけで、他の月の残業代はほとんどが2、3万円ぐらいにとどまる。このようなケースが非常に多く、特定技能外国人や技能実習生は大きな不満を持ちます。

※技能実習生たちの間では、「手取り給料」とは額面給料から税金や社会保険料と家賃(寮費)を引いた額を指しています。家賃も差し引いた後の「手取り給料」を彼らは仲間と比較します。

来日前に聞いていた仕事内容や手取り給料と実際とが違うと、外国人労働者たちは非常に大きな不満や不信感を持ちます。受け入れ事業者はこのような行き違いをなくす努力をしなければなりませんが、労働条件の不一致の原因には外国の人材会社(送出機関等)の通訳が関係している場合もあります。

送出機関等の通訳の能力と通訳の使い方の問題

送出機関等の通訳の多くは元技能実習生が担当しています。元留学生が担当することもありますが、大きな日系企業や日本で働いている元留学生と比べると日本語力が及ばない場合が多いです。そして、採用面接で彼らに通訳を任せる場合には留意点があります。ひとつは通訳能力の限界です。面接の通訳者たちの通訳力が必ずしも高いわけではありません。

こちらが普通に日本語をしゃべれば、それが通訳を介して相手に正確に伝わると考えてしまいがちですが、それは大間違いです。スキルの高いプロの通訳者ではない場合、当事者が話したことの一部だけを「つまみ通訳」したり、自分が日本語の意味を少し誤解し、それに基づいて間違った通訳をしたりすることが非常に多いです。また、必要な場合でもメモを取らずに通訳をする人もいます。

さらに、正しい通訳をしてもらうには、通訳者を使う人にも経験や配慮(発声・話し方・表現・言葉の切り方など)が必要です。通常は、通訳を使いこなすことは難しく、自分の言いたいことが通訳を介して相手に80%以上伝わるということはあまりないと考えてください。

このような通訳能力の限界や通訳の使い方の問題による面接時のミスコミュニケーションが労働条件に関する誤解を生み出す一因にもなっています。

送出機関等の通訳の意図的な誤訳

複数の送出機関経営者によると、それ以外に、人材会社側が労働条件に関して意図的に間違った通訳を行うこともあります。

例えば、採用面接で受け入れ企業の社長が労働条件(仕事内容や給料等)について細かく説明したとします。しかし、その条件だと候補者の応募意欲が下がってしまう場合、人材会社側は労働条件について意図的に間違った通訳をして候補者たちを安心させてしまいます。

ひどい場合は、ブローカーが労働条件についてウソの説明をして候補者を集めたうえで、面接の際に人材会社の通訳者に言い含め、自分の虚偽説明に合致した通訳をさせる場合もあります。

これらは、一人でも多くの人材を求人にマッチングさせ、手数料を少しでも多くもらいたいという人材会社やブローカーの思惑によるものです。こうやって労働条件に関して間違った理解をさせられて来日した技能実習生や特定技能外国人が「聞いていた条件と違う」と思い、大きな不満を持つケースが頻発しています。

求人や面接でのミスコミュニケーションを防止する3つの対策

訪日前に聞いていた労働条件と実際の労働条件が違うという不満は、外国人材が短期間で離職する大きな原因になっています。機会があれば他の会社に転職し、転職しない場合でも、仕事のパフォーマンスが下がります。このようなミスコミュニケーションを防止する対策として以下のような方法が有効です。

1.良い送出機関や良い監理団体を選ぶ
  • 外国の良い人材会社(送出機関)は候補者たちに正確な労働条件を説明し、通訳者にも慎重に通訳をするよう指導しています
  • 外国の良い人材会社を直接見つけられない場合は、そのような会社と取り引きしている監理団体等を探すことが大切です。
2.自前の通訳者(チェック通訳)を入れる
  • 送出機関等の通訳を使ってもよいですが、チェックのために自前の通訳者(チェック通訳者)を入れると誤訳や通訳もれを防止できます。
  • まとまった人数を面接する場合、監理団体が現地に通訳者を連れて行って面接に同席させ、送出機関等の通訳をチェックしたり補足したりする場合があります。監理団体の通訳者にオンラインで面接に入ってもらうのも一つの方法です。
3.動画を用いる
  • 応募者たちに仕事内容を理解させる際、動画などを用いて分かりやすく説明し、誤訳や誤解が発生する余地をなくすことも有効です。現場の動画を見せて仕事内容を説明する企業は増えています。
  • 動画の音声を現地語にすると一層効果的です。
  • 動画は応募段階で見てもらい、面接時に動画を見たか確認したり、もう一度見せたりするとよいでしょう。

まとめ

このページのまとめ

  • 海外から雇用した特定技能外国人や技能実習生に関して多いトラブルは、訪日前に聞いていた労働条件(仕事内容や手取り給料の額など)と実際の労働条件が違うというトラブルです。これには面接時の通訳が原因になっているケースもあります。
  • 通訳者の能力の限界などによる面接時のミスコミュニケーションが「労働条件の不一致」を生み出すこともあります。
  • 外国の人材会社側が労働条件に関して意図的に間違った通訳をすることもあります。1人でも多く送り出して手数料を多く稼ぎたいという思惑からです。
  • 労働条件の不一致は、外国人が短期間で離職する大きな原因になります。それを避けるには、①良い送出機関や良い監理団体と取り引きする ②監理団体等の通訳に面接に同席してもらうかオンラインで入ってもらい、送出機関の通訳をチェックしてもらう ③仕事内容について現場の動画などを用いて分かりやすく説明する――などの対策が有効です。

-採用ノウハウ

error: Content is protected !!