基礎知識

「資格外活動」の制約とは? 留学生をアルバイトで雇用する際の注意点についてくわしく解説します。

日本のさまざまな職場で欠かせない戦力となっている外国人留学生。彼らがアルバイトをするには「資格外活動許可」が必要で、アルバイト(資格外活動)として働ける時間は「週28時間以内」となっています。このことについて雇用主が十分に配慮しないと、処罰の対象になります。また、留学生が恒常的に週28時間を超えて働くと、在留資格(通称・ビザ)の更新・変更ができない場合があります。そうなると、留学生は就職・進学・進級ができず、帰国するしかありません。資格外活動とは何か、留学生等をアルバイトで雇用する場合に注意することは何かについて解説します。

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ポイント解説

◎外国人留学生等が日本でアルバイトをするには、在留資格(通称・ビザ)とは別に「資格外活動許可」を取得しなければなりません。留学生をアルバイトで雇う場合は、学生証などで在籍状況を確認し、在留カードで「資格外活動許可」の有無を確認します。

◎資格外活動許可には包括許可と個別許可があります。留学生等が取得する包括許可では、資格外活動(アルバイト)は週28時間以内しかできません。

◎「週28時間」の数え方:どの曜日から数え始めても7日間で28時間以内でなければなりません。

◎留学先の学校・大学等が定める長期休暇時は、留学生は1日8時間、週40時間までアルバイトをすることができます。ただし、臨時休校などの場合は週28時間以内のままです。

◎休学中の留学生や卒業後はアルバイトをできません。

◎雇用主が外国人材に意図的にオーバーワークをさせた場合や就労時間を十分に管理しなかった場合、刑罰の対象になります。

◎オーバーワークをした外国人は在留資格を更新・変更できない場合があります。すると、留学生の場合、就職が内定していても就職できず、進学・進級もできません。

◎資格外活動で働く外国人がダブルワークをしていながら入管に一つのアルバイトしか報告していない場合でも、入管は「外国人雇用状況の届出」などを通じて就労状況の全体を把握することができます。

◎学校の成績や出席率が悪い留学生は、在留期間更新の審査が厳しくなります。

◎外国人留学生をアルバイトとして雇う場合、事業者は採用時と離職時に「外国人雇用状況の届出」を提出します。また、在留期間を定期的にチェックしたり、他の勤務先と合わせても週28時間以内に収まっているか指導・管理したりしましょう。

◆このページの内容

アルバイトができる在留資格と資格外活動許可

在留カードの裏面(資格外活動許可の記載)

日本に住んでいる外国人は何らかの在留資格(通称・ビザ)を持っています。在留資格の種類によってはアルバイトとして働くことができない場合もあるため、外国人採用の際には、「在留カード」で在留資格を確認してください。また、在留資格によっては、アルバイトをするために「資格外活動許可」が必要となりますので、在留カードの裏面などで許可の有無も確認してください。

① 資格外活動許可とは

外国人留学生や「家族滞在」の外国人等がアルバイトをしたい場合、在留資格とは別に「資格外活動許可」を取得する必要があります。外国人アルバイトを雇う際は、在留カードの原本で資格外活動許可の有無を確認しましょう。

「留学」の在留資格は日本で学習をする目的で許可されており、本来は就労が認められていません。留学生の在留カードを見ると、「在留資格」欄に「留学」と書かれ、「就労制限の有無」という欄に「就労不可」と書かれています。これは「原則として働くことはできない」という意味です。

ただし、入管から「資格外活動の許可」を受けると、一定の制限のもとでアルバイトをすることができます。この許可を取得すると、パスポートに資格外活動許可のシールが貼られ、在留カードの裏に「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」などと記したスタンプが押されます。ただし、パチンコ店やゲームセンター、スナック、キャバクラ、麻雀店、性風俗店などでの仕事はできません。

留学生や家族滞在の外国人が資格外活動で行うアルバイトには「週28時間以内」という就労制限があります。

※「28時間」の数え方については、後で詳しく説明します。

② 包括許可と個別許可

資格外活動許可には包括許可と個別許可の2種類があります。

在留資格が「留学」「家族滞在」等の場合→包括許可

  • 包括許可は、アルバイト先が決まる前から申請することができ、一度許可を取れば、アルバイト先が変わっても許可を再取得する必要はありません。
  • アルバイトとして働ける時間は週28時間までです。
  • 「留学」の場合、学則で定める長期休業期間中は1日8時間まで、週40時間まで働けます。
  • 「留学」の場合、休学中や卒業後はアルバイト(資格外活動)をすることはできません。

在留資格が「技人国」「文化活動」「教授」「教育」などの場合→個別許可

  • 資格外活動は個別許可となり、アルバイト先や仕事内容が決まってから申請しなければなりません。アルバイトの内容は、在留資格で認められている活動内容にそった業務に限定されます。
  • アルバイト先が変わるたびに許可を取得し直さなければなりません。
  • アルバイトとして働ける時間は申請のたびに個別に決定されます。それは在留資格で認められている活動を妨げない範囲で決められます。

③ 資格外活動許可の申請に必要なもの

  • 資格外活動許可申請書
  • 在留カード
  • パスポート

初めて来日する際は、入国時に空港で在留カードをもらうときに資格外活動許可の申請を行うことができます。入国後は、在留期間の更新を申請するときに一緒に申請することができます。

④ 外国人アルバイトの採用面接で確認する書類

外国人アルバイトを採用する際は次のことを確認してください。

身分確認パスポート、在留カード、学生証など
資格外活動許可在留カードの裏面など
住民登録の有無住民票の写し

資格外活動許可を受けると、シールタイプの「資格外活動許可書」がパスポートに貼り付けられます。また、在留カードの裏面にスタンプなどで資格外活動の許可を得たことが記載されます。

在留カード等読取アプリケーション

在留カードの真偽を識別するツールとして、スマートホンで在留カードのICチップに記録された情報を読み取り、カードの券面に記載された情報が正しいかどうかを確認するアプリがあります。出入国在留管理庁が無償で提供しているアプリで、下記のリンク先からダウンロードできます。

⑤ アルバイトが認められる在留資格

アルバイトとして雇える外国人の主な在留資格(通称・ビザ)には次のようなものがあります。実際に資格外活動許可を受けている外国人の約8割は留学生(在留資格は「留学」)です。

  1. 永住者
  2. 定住者
  3. 日本人の配偶者等
  4. 永住者の配偶者等

上記の4つには就労制限がありません。資格外活動許可がなくてもアルバイトができます。

  1. 留学
  2. 家族滞在
  3. 文化活動

これら3つの在留資格には就労に関する制限があり、アルバイトをする場合には資格外活動許可を取得する必要があります。

  1. 特定活動

在留資格「特定活動」にはさまざまな種類があり、「就労不可」の場合と「就労可」の場合があります。「就労不可」の特定活動の外国人がアルバイトをする場合には資格外活動許可が必要です。

  • 特定活動の在留資格を取得・更新する際に発行される「指定書」に記載された活動内容に沿った(仕事、アルバイト)をすることができます。
  • ワーキングホリデーの特定活動の場合は「就労可」で、就労時間の制限もありません(労基法上の制限はあります)。アルバイトをする場合にも資格外活動許可は不要です。
  • 留学生が学校・大学等を卒業後に就職活動をするための特定活動は「就労不可」となっており、アルバイトをするには資格外活動許可が必要です。
  • 出国準備のための特定活動の場合、資格外活動許可を申請しても、許可が出ません。
  1. さまざまな就労資格

就労可能な在留資格を持っている人が在留資格で認められた活動と違う仕事(アルバイト)をしたい場合、資格外活動許可(個別許可)を取得する必要があります。例えば、「教育」の在留資格を持っている人が週末に語学学校等で有償で教えたい場合などがそれに当たります。その場合、主たる在留資格での活動(本業)の支障にならない範囲で資格外活動の就労可能時間が決められます。

意外と知らない「週28時間」の数え方

① 資格外活動の就労時間は週28時間以内

留学生等のアルバイト(資格外活動)には、週28時間以内という制限があります。

就労時間に制限があるのは、学業に支障が出ないようにするためです。「週28時間以内」の厳守については、留学生だけに任せず、事業者も留学生に十分に説明し、管理しなければなりません。特に「他の職場でもアルバイトをしているかどうか」「他の職場での就労時間も含めて週28時間以内を守れているかどうか」を何度も確認するようにしてください。

② どの曜日から数えても「週28時間」に!

資格外活動でアルバイトとして働ける時間は原則として週28時間以内ですが、28時間の数え方について注意点があります。実は「どの曜日から数え始めても7日間で計28時間以内」になっていることが必要です。
下記の表を見てみましょう。1週目(日~月)も2週目(日~月)もそれぞれ28時間以内になっていますが、表の中の水色の部分(1週間)では合計42時間となり、週28時間を大きく上回ってしまいます。これは違反です。

1週目0時間4時間4時間1時間7時間4時間8時間
2週目8時間6時間6時間3時間2時間0時間3時間

「長期休暇」の内容に注意

留学生は、夏休みなど、自分が通う学校・大学等の規則で定められている長期休暇の間は1日8時間(週40時間)までアルバイトをすることができます。ただし、例えば感染症の流行などで臨時休校になった場合などは、正式な長期休暇ではありませんので、「1日8時間(週40時間)以内」ではなく「週28時間以内」のままです。

1日8時間以内のアルバイトが認められているのは、あくまでも「学則による長期休業期間」に限られています。

卒業後や休学中はアルバイトができません

留学先の学校・大学等を卒業後も「留学」の在留資格の有効期間が残っていることが多いです。しかし、卒業してから帰国するまでの間や新しい在留資格に切り替えるまでの間にアルバイトをすることはできません。留学生のアルバイトが認められるのは、学校・大学等に在籍している間だけです。

留学生アルバイトを雇う事業者は「長期休暇」の内容や卒業後・休学中の就労に気をつけてください。

違反した場合は就職・進学できずに帰国するケースも!

外国人留学生が許可された制限時間を超えて就労した場合、雇用する事業者にも本人にも重大な不利益があります。

① 事業主にも罰則があります!

資格外活動でアルバイトをする外国人が就労時間の上限である週28時間を超えて働くことを「オーバーワーク」と言います。オーバーワークが入管に知れると、雇用主も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。

雇用主が外国人材に積極的にオーバーワークをさせた場合はもちろん、オーバーワークの可能性について十分に確認しなかった場合にも、不法就労を指示または斡旋したとして5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

外国人材のオーバーワークや不法就労については「知らなかった」ではすみません。自社での就労時間管理をしっかり行うとともに、他社での就労時間と合わせても制限時間を超えないよう、指導・管理しましょう

② 留学の在留資格を更新・変更できない

「週28時間以上働けば、実家からの仕送りなしでも学費と生活費を稼げる」とか「できるだけ働いて実家にたくさんのお金を送りたい」と考える留学生もいます。しかし、恒常的に週28時間の制限を超えて働くと、「留学」の在留資格を維持することが困難になります。

オーバーワークが入管に知れると、留学生本人に次のような不利益があります。

  • 「留学」の在留資格の在留期間を更新できない(=進学・進級できない)。
  • 卒業して就職するために在留資格を「技術・人文知識・国際業務」などに変更しようとしても、変更が許可されない(=就職できない)。

また、オーバーワークが原因で帰国した外国人留学生が再び留学生として来日することは非常に困難です。在留許可がなかなか出ないためです。

留学生の人生設計に深刻な影響が及ぶ事態を避けるためにも、雇用主も留学生のアルバイト時間の管理に十分に注意しましょう。

入管はどうやってオーバーワークを把握するのか

入管からオーバーワークの留学生に届いた「資料提出通知書」

雇用状況の届出など

実際には複数のアルバイトをしているのに、入管(出入国在留管理局)に一つのアルバイトしか報告しない。そのような方法でオーバーワークを隠していた留学生が昔はたくさんいました。しかし、今はそのような方法も通用しません。留学生のオーバーワークに対する入管の把握や対処は以前より厳しくなっており、「オーバーワークやダブルワークはばれない」というのは昔の話です。

事業者はアルバイトも含めて外国人を雇った場合、ハローワークに「雇用状況の届出」を提出します。この情報を入管も把握できるので、外国人が複数の職場で働いても、入管が全体状況を把握できます。また、課税証明書等からもオーバーワークが判明する場合があります。

審査が厳しくなるケース

  • 留学生が在留期間の更新を申請すると、入管はその人の収入記録を調べます。収入が多い場合や学校の出席率が低い場合、学校の成績が悪い場合などは審査が厳しくなります。
  • 留学先の学校によっても違いがあります。入管から信頼されている学校の留学生が在留資格を更新する場合は、全体的に審査期間が比較的短く、認定される在留期間も長い傾向があります。逆に、不法滞在や退学、出席率が低い留学生が多い学校は、どの留学生も入管から厳しく審査される傾向があります。

外国人アルバイトを雇う事業主の留意点

外国人留学生をアルバイトで採用する場合の事業主の留意点をまとめます。

① 採用前の留意点

  • 在留カードで在留資格や期限、資格外活動許可の有無を確認
  • 住民票の写しで住民登録を確認
  • 学生証などで本当に学校に在籍しているかどうかを確認
    ※卒業後は、在留期間が残っていてもアルバイトとして働くことができません。

② 採用後の留意点

外国人雇用状況の届出

外国人を雇用(アルバイトを含む)した場合、事業主はハローワークに「外国人雇用状況の届出」を行わなければなりません(雇用対策法第28条)。届出を怠ったり虚偽の届出を行ったりすると、30万円以下の罰金の対象となります。

具体的には、ハローワークに提出する「雇用保険被保険者資格取得届」に雇用する外国人の「国籍・地域」「在留資格」「在留期間」を記入します。

しかし、留学生の場合は「昼間学生」に該当するので雇用保険の対象外です。このため、「外国人雇用状況届出書」に必要事項を記入して提出します。届出様式は下記のリンク先(厚労省HP)から取得できます。離職時にも届けが必要です。

労働法令の遵守

外国人アルバイトにも日本の労働法令が適用されます。労働基準法や最低賃金法などを守りましょう。日本人と同じ業務の場合、日本人との間に賃金格差を設けてはいけません。

源泉徴収または「租税条約に関する届出書」

外国人従業員にも源泉徴収の手続きをします。ただし、留学生の出身国によっては免税される場合があります。例えば、中国人・韓国人・タイ人などの留学生のアルバイト給与には、通常、所得税がかかりません。これは、それぞれの国と日本との間に結ばれた租税条約によるものです。日本と租税条約が結ばれた国の出身者であれば、「租税条約に関する届出書」を税務署に提出します。

在留期間や就労時間の管理

  • 留学生の在留期間と満了日(在留期限)を定期的に確認してください。在留期限を過ぎても日本に滞在していると不法滞在なので、アルバイトとして雇うことはできません。
  • 他社でのアルバイトと合わせても週28時間を超えないように常時、指導・管理してください。

まとめ

このページのまとめ

◎アルバイトができる在留資格と資格外活動許可

  • 外国人留学生等が日本でアルバイトをするには、「資格外活動許可」が必要です。留学生をアルバイトで雇う場合は、学生証などで在籍状況を確認し、在留カードで「資格外活動許可」の有無を確認しましょう。
  • 資格外活動許可には包括許可と個別許可があります。留学生等が取得する包括許可では、アルバイト(資格外活動)は週28時間以内しかできません。
  • 「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」は資格外活動許可がなくてもアルバイトができますし、就労時間の制限もありません。「特定活動」の一部や「留学」「家族滞在」「文化活動」等の外国人がアルバイトをするには資格外活動許可が必要です。

◎「週28時間」の数え方

  • どの曜日から数え始めても7日間で28時間以内でなければなりません。

◎長期休暇時など

  • 留学先の学校が定める長期休暇時は、留学生は1日8時間、週40時間までアルバイトをすることができます。ただし、臨時休校などの場合は週28時間以内のままです。
  • 休学中や卒業後は、資格外活動(アルバイト)はできません。

◎違反した場合の不利益

  • 雇用主が留学生等に意図的にオーバーワークをさせた場合や十分に管理をしなかった場合、刑罰の対象になる可能性があります。
  • オーバーワークをした外国人は在留資格を更新・変更できない場合があります。留学生の場合、日本で就職が内定していても就職できず、進学先に合格しても進学できません。

◎入管はどうやってオーバーワークを把握するのか?

  • 資格外活動で働く外国人がダブルワークをしていながら入管に一つのアルバイトしか申告していない場合でも、入管は各事業主からハローワークに提出される「外国人雇用状況の届出」などを通じて就労状況の全体を把握することができます。
  • 学校の成績や出席率が悪い学生は在留期間更新の審査が厳しくなります。

◎外国人アルバイトを採用した後の留意点

  • 外国人留学生の採用時と離職時に「外国人雇用状況の届出」を行ってください。
  • 在留期間を定期的にチェックし、他のアルバイトと合わせても週28時間以内に収まっているかも指導・管理してください。

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