
外国人のトラックドライバーなどを育成・雇用する際、海外で取得した運転免許を日本の免許に切り替える「外免切替制度」を用いるケースが多く用いられています。この制度については、従来、短期滞在者がホテルを住所にして免許証を切り替えることができたほか、筆記試験が簡単すぎるとの指摘もあり、2025年10月に運用が厳格化されました。観光客などの短期滞在者は対象外となり、住民票の写しの提出が義務化。筆記試験の問題数は10から50に増え、合格に必要な正答率も70%から90%に引き上げられました。技能試験でも、横断歩道での対応などがチェック項目に追加され、全体的に採点も厳しくなりました。
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ポイント解説

・「外免切替」とは:外国の運転免許証を持っている人は日本で「外国免許切替(外免切替)」という手続きをすれば、日本の運転免許証を取得することができます。主な手続きは適性試験(視力検査など)、知識確認(筆記試験)、技能確認(コースを運転)の3点です。
・外国からの旅行者でも使えた外免切替:従来、外国人旅行者でも外免切替を利用できました。また、知識確認はイラスト付きの二択問題が10問(必要正答率70%)で、「簡単過ぎる」と指摘されていました。
・外免切替で日本の免許を取得し日本以外で運転:日本に旅行中に外免切替で日本の免許を取得後、この免許をもとに国際免許証の発行を受け、日本以外の国での運転に活用する外国人もいました。
・外免切替ドライバーによる事件事故:外免切替で免許を取得した外国人による悪質な事故も散見されるようになり、「基本ルールを理解していない外国人による運転が交通安全を著しくおびやかしている」との声が高まっていました。
・厳しくなった外免切替手続きの内容:2025年10月から外免切替の運用が厳しくなりました。主な変更点は、①住民票(写し)提出が原則義務付けられ、旅行者は制度を利用できなくなった ②知識確認のイラストは廃止、問題数は50問に増え、必要な正答率も90%に引き上げ ③技能確認では、確認ポイントが増え、審査も厳格化――といった点です。
◆このページの内容
- ポイント解説〈時間のない方はこちらだけ!〉
- 「外免切替」とは?
- 外国からの旅行者でも使えた外免切替
- 外免切替で日本の免許を取得し日本以外で運転
- 外免切替ドライバーによる事件事故
- 厳しくなった外免切替の内容
- まとめ
「外免切替」とは?

外国の運転免許証を持つ人が日本で車を運転するには次の三つの方法があります。
① 道路交通に関するジュネーブ条約に基づく国際運転免許証を所持する。
② 外国・地域の運転免許証に日本語の翻訳文を添付する。
③ 日本の免許証を取得する。
①については、道路交通に関する国際的な枠組みとして「ジュネーブ条約」があり、加盟国に厳格な運転免許取得条件などを求めています。日本も加盟しており、加盟国同士では多くの場合、試験免除で発行される国際免許証が使えます。
②は条約加盟国以外で日本と同等の免許制度があるとされる国・地域などが対象です。
しかし、中国やベトナム、インドネシア、パキスタンなどは①にも②にも該当しないので、日本で運転するには③の方法しかありません。それが日本の運転免許試験場で学科や技能の試験(確認)を受ける「外国免許切替(外免切替)」制度です。
◆外免切替の手続きの流れ(2025年10月以降)
1. 外国運転免許証の確認 |
有効な外国の運転免許証を所持していることを確認。発行国で3か月以上滞在していた証明(パスポートの出入国記録など)が必要。 |
2. 必要書類の提出 |
・外国運転免許証とその日本語翻訳文 |
3. 適性試験(視力検査など) |
視力・色覚・運動能力などの基本的な運転適性を確認 |
4. 知識確認(筆記試験) |
日本の交通ルールや標識に関する筆記試験を実施 |
5. 技能確認(実技試験) |
実際に試験コースを走行し、運転技術や安全確認の方法を評価。 |
6. 日本の免許証交付 |
すべての試験に合格すると、日本の運転免許証が交付される。 |
外国からの旅行者でも使えた外免切替

「外免切替」は道路交通法に基づく手続きで、外国の運転免許証を持っている人が試験によって日本での運転に必要な知識や技能があると認められれば、日本の免許証を取得できる制度です。
筆記試験が簡単なうえ、日本に住む外国人だけでなく、外国からの旅行者(短期滞在者)でもホテルなどに滞在しながら日本の免許に切り替えができました。旅行者の場合、ホテルや知人宅で「一時滞在証明書」を発行してもらい、パスポートと合わせて提出すれば、一時滞在の住所が免許証記載の住所として登録される仕組みでした。こうした簡易な手続きが問題視されていました。
外免切替は主に在留外国人の間で年々人気が高まり、警察庁の統計などによると、2024年に外免切替で免許を取得した人(海外で免許を取得した日本人を含む)は75,905人で、2014年(30,381人)の約2.5倍になりました。2024年の取得者のうち外国人は前年より22・5%増の68,623人で、2014年の2.7倍となっています。
◆外免切り替えで日本の免許を取得した人の数
外免切替で日本の免許を取得し日本以外で運転

外免切替であってもいったん取得してしまえば、日本の免許証と概観も効力も同じです。外国から日本に旅行して外免切替で日本の免許を取得した外国人の中には、この免許で国際免許証を発行してもらい、日本以外の国での運転に活用する人もいました。
日本は、運転の国際的な統一ルールを定めた「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」に加盟しており、日本の免許証があれば、国際運転免許証を取得して100カ国以上の加盟国で運転ができるのです。
未加盟国の国民の中には、手続きが簡単な外免切替で日本の免許を取得して日本で運転したり、さらにその免許証で国際免許証を発行してもらって他国で運転したりする人も多かったようです。
外免切替ドライバーによる事件事故

在留外国人や外国人観光客が増え、通常の免許取得方法や外免切替を利用して日本の免許を取得する外国人も年々増えました。その中で、外免切替で免許を取得した外国人による悪質な事故も散見されるようになったため、「基本ルールを理解していない外国人による運転が交通安全を著しく損なっている」と指摘され、外免切替の手続きの見直しにつながりました。
外国人ドライバーによる事故は2024年に7,286件あり、2015年と比べて8.3%増加。このうち死亡事故も54件ありました。7,286件の運転者の国籍別内訳は、中国1,697件、韓国・朝鮮1,227件、ブラジル1,065件など。運転者の9割は日本の免許証(通常取得または外免切替)を持っていましたが、国際運転免許も3.1%いました。
埼玉・小学生ひき逃げ事件
2025年5月に埼玉県三郷市で下校中の小学生4人をはねてけがをさせ、そのまま逃げたとして、解体工の40代の中国人男性が逮捕され、その後、道交法違反(ひき逃げ)と自動車運転処罰法違反(過失傷害アルコール等影響発覚免脱)の罪で起訴されました。
被告は中国で運転免許を取得し、外免切替で日本の免許を取得していました。
新名神逆走事件
2025年5月、三重県で高速道路を逆走したとして、滋賀県長浜市に住むペルー人の30代の男性が逮捕され、その後、自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致傷)と道路交通法違反(酒気帯び運転など)の罪で起訴されました。同年10月、津地裁は被告に懲役1年6カ月(求刑懲役3年)の実刑判決を言い渡しました。判決によると、男性は三重県亀山市の新名神高速道路を逆走し、衝突を避けようとした車の運転手ら6人にけがをさせました。
裁判官は「警察車両を見て飲酒運転が発覚することを恐れ、逆走を開始した。身勝手な意思決定は強い非難に値する」と指摘しました。
この男性はペルーで免許を取得後に来日し、外免切替を利用して日本の免許証を得ていました。
厳しくなった外免切替の内容
このような流れを受けて道路交通法施行規則の一部が2025年10月1日に改正され、外免切替の手続が厳格化されました。主な変更点は下の表の通りです。
◆外免切替の手続きの流れ(2025年10月以降)
住所確認 |
【改正後】国籍にかかわらず住民票の写しの提出が原則義務付けられ、観光客などの短期滞在者は制度を利用できなくなった。 |
知識確認(筆記試験) |
【従来】イラストが付いた計10問の二択問題(合格に必要な正答率は70%以上) |
運転技術を調べる技能確認(実技試験) |
【改正後】コースを走行してルールに合った運転ができるかをみる。日本では歩行者と車との事故が多いため、横断歩道で歩行者を優先できるかを確認する項目を追加。進路変更や右左折をする際にウインカーを出すかどうかなども確認項目に加え、免許証の新規取得時と同じレベルで厳しく審査する。 |
まとめ

このページのまとめ
◎外国の運転免許証を持っている人が日本で「外国免許切替(外免切替)」という手続きをすれば、日本の運転免許証を取得することができます。
◎外免切替の主な手続きは適性試験(視力検査など)、知識確認(筆記試験)、技能確認(コースを運転)の3点。従来の知識確認はイラスト付き二択の10問だけで、技能確認も甘いと評判でした。
◎従来、日本に短期滞在の旅行者でも外免切替を利用できたことや、試験が簡単過ぎるとの批判があったことに加え、外免切替で日本の免許を取得した外国人ドライバーによる悪質な事件・事故も散発したため、制度が改正されました。
◎2025年10月から外免切替の運用が厳しくなりました。①住民票(写し)提出が原則義務付けられ、旅行者は制度を利用できなくなりました ②知識確認のイラストは廃止され、問題数は50問に増え、必要な正答率も90%に引き上げられました ③技能確認での確認ポイントが増え、審査も厳格化されました。