
外国人材に寮を提供する場合、部屋の使い方や掃除の状況を定期的にチェックして指導することで家主や近隣とのトラブルや火災を防止することができます。指導を継続することで実際に部屋の使い方が改善されるとともに、外国人材の規範意識が高まり、職場での態度や仕事への取り組み方にも良い影響を及ぼします。監理団体や登録支援機関の協力でできる指導方法をお伝えします。
◆このページの内容
技能実習や特定技能での住宅サポート

技能実習の住宅サポート(一律)
技能実習や育成就労(2027年導入)では、受け入れ事業者が外国人材の住宅を確保する義務があり、多くの場合、外国人材に寮を提供しています。
寮は、事業者が他者から物件を借り上げて技能実習生に使わせるケースが多く、家賃を実習生にも負担(多くの場合1人15,000円~20,000円)してもらいます。実習生の負担額を小さくして求人への応募や職場定着を促進しようと努力している受け入れ企業もあります。
特定技能の住宅サポート(対応分かれる)
特定技能では、受け入れ事業者の義務は住居確保(家探しや契約手続きなど)のサポートにとどまります。ただし、技能実習から同じ勤務先で特定技能に持ち上がる場合は、事業者が引き続き寮を提供することが多いです。
一方、日本の他社で働いていた外国人や初めて就職する留学生を特定技能で雇う場合、事業主が寮を提供しないケースも多く見られます。ただし、このような「国内人材」の特定技能外国人は人数に限りがあり、海外で募集した「海外人材」を特定技能で雇い入れるケースが増えています。その場合、募集人気に影響するため、寮を用意することも多々あります。
外国人をめぐる住宅トラブルと回避策

実習生寮をめぐるトラブル
ところで、外国人に部屋を貸したがらない家主も多くいます。主な理由の一つは、家主が入居後や退去時のトラブルを心配しているからです。受け入れ事業者が借り上げる場合、トラブルには事業者が対応するので家主は安心ですが、それでも、部屋が損傷した場合はトラブルになるケースもあります。
例えば、女性の実習生数人が住んでいた寮の修理費をめぐるトラブルを取材したことがあります。水道管が詰まって高額の修理費(水道管の一部取り替え)が発生し、家主が「水道管が詰まったのは、入居者たちが残飯や髪の毛などを台所や風呂で大量に流し続けたから」として受け入れ企業に修理費負担を求めて企業が応じました。その後、企業は実習生たちからその費用を回収しようとしたため、実習生が支援団体の助力を得て裁判となり、実習生たちが勝訴しました(=生活実態と水道管故障との因果関係が認められなかったため)。
監理団体などの協力で部屋の使用状況チェック
こうした事態を避ける狙いもあって、技能実習の監理団体や特定技能の登録支援機関が、外国人材が寮をどのように使っているかを点検し指導してくれる場合があります。指導を続ければ、外国人材は部屋を適切に使うようになり、家主や近隣とのトラブルを回避できます。
福井県のある監理団体(協同組合)の指導員は毎月、実習生を訪問指導する際に寮の使い方や掃除の状況をチェックしています。チェック項目は30点に及び、例えば次のようなものがあります。
- 玄関内側の状況(掃除、整理整頓)
- ガスコンロ周りの状態(油汚れ、壁の汚れなど)
- シンクの状態(食器がたまっていないか、ゴミや残飯が捨てられていないかなど)
- トイレの状況(水漏れ、便器の汚れ、ゴミなど)
- 風呂場の状況(汚れ、カビ、整理整頓)
- 洗濯機の状態(汚れ、ほこり、水漏れ、排水状況)
- 寝室の状況(整理整頓、掃除、布団などの状態)
- たばこ関係(灰皿・吸いがらの状態、喫煙場所を守っているか)
- コンセントの状況(たこ足、差し込みの状態)
- 壁、床、扉、ふすまの状態(汚れ、穴、ピン止め、テープ貼りなど)
- ゴミの分別状況

指導員はこれらの項目をすべてチェックして写真を撮り、各写真をエクセルの報告書にはり付けてコメントを記入しています。例えば、冷蔵庫なら、メイン庫、ドアポケット、冷凍庫の写真を報告書にはり付け、写真の下に「要掃除」「要整理」などのコメントを付けます。台所や部屋に食べ残しの食品が放置されていれば、それも写真に撮ってコメントします。
部屋の使い方や掃除の指導方法とその意外な効果

家主・近隣とのトラブルを防ぐ効果
この指導員は部屋ごとに実習生を集め、報告書の写真を見せながら部屋の使い方や掃除のやり方を根気よく継続指導しています。次の訪問チェックまでには改善するように言い聞かせ、翌月は、改善できた部分をほめ、引き続き課題が残った部分については再度指導します。
このような指導を根気よく続けると、部屋の使い方がだんだんと改善され整理整頓されていきます。指導・改善状況の内容は受け入れ企業等にも説明します。これによって次のような効果があります。
- 部屋の適正使用をうながし、家主や近隣とのトラブルを防ぐ。
- 修理の必要がある場合は、家主に交渉して対応してもらい、入居者の不便を解消できる。
- 経年劣化や通常使用に伴う損耗以外の部屋の汚れ・破損は賃借人に原状回復義務があるので、受け入れ事業者としては将来の不測の出費を防ぐことができる。
- 喫煙の場所や始末、コンセントの使用状況もチェックするので、火災防止にもつながる。
部屋の使い方や掃除についてこれほどしっかり指導してくれるケースは少ないかも知れません。しかし、「費用だけは安いが、指導力やサポート力が低い組合や登録支援機関」でなければ、従来の監理費や支援費の範囲内でできることについて相談に乗ってもらえます。組合や登録支援機関の協力を得て寮の使い方や掃除の状況をチェック・指導することをお勧めします。
清掃等の指導によるもう一つの意外な効果
この指導員によると、部屋の使い方や清掃の指導にはもう一つの大きな効果があります。
指導を根気強く続け、外国人材が改善に取り組むことによって、部屋がだんだんきれいになります。すると、外国人も住み心地が良くなって掃除や整理整頓などを継続しますし、それにつれて「外国人たちに規律や規範意識が身につき、職場での態度や仕事への取り組み方も良くなっていく」とのことです。
担当指導員の話
整理整頓や掃除の仕方はルールの一種です。そのルールを守る習慣を身に付けることで自己管理ができるようになり、規範意識も高まります。そうなると、有給休暇の事前申告などほかのルールも守るようになっていきますし、仕事にもきっちり取り組むようになります。
ついでに自転車の状況確認も

多くの技能実習・特定技能の受け入れ事業者が、寮で暮らす外国人材に通勤や買い物に使う自転車を無償で貸し出しています。
この指導員は寮の使用状況をチェックする際、ときどき自転車の状況も点検します。内容は、ブレーキのきき具合▽前照灯がつくかどうか▽サドルのぐらつきや高さ(両足が地面につくかどうか)▽反射材の状況▽タイヤの空気や摩耗状況▽防犯登録の有無――などです。
これらはその自転車に乗る外国人材の安全や周囲の安全確保につながります。雇用する外国人材が自転車で事故を起こしたり事故に巻き込まれたりした場合、保険に入っていても本人も事業者も大変です。また、交通事故の加害者になった場合、相手に迷惑をかけてしまいます。
外国人労働者たちは日本人以上に自転車で遠くに買い物に行く傾向があります。彼らが事故に遭わないよう、日ごろの点検で安全を確保できれば、これに越したことはありません。
まとめ
このページのまとめ
◎外国人に部屋を貸したがらない家主が多い理由の一つは、入居後や退去時のトラブルを心配するからです。部屋が損傷した場合、家主と借主との間でトラブルになるケースがあります。
◎こうした事態を避ける目的もあって、監理団体や登録支援機関が、外国人材が寮をどのように使っているかを点検・指導してくれる場合があります。指導項目には、台所や風呂場の状況、洗濯機の状態、冷蔵庫の使用状況、たばこ関係、壁・床・扉・ふすまの状態などがあります。
◎点検した使用状況や掃除状況を写真画像つきで報告書にまとめ、それを使って外国人材に毎月指導を続けると、部屋の使い方や掃除の仕方が徐々に改善されていきます。それによって、家主や近隣とのトラブル防止▽将来の修理費負担の回避▽火災防止――といった効果が見込めます。
◎清掃などの指導によるもう一つの効果は、外国人材に規律や規範意識が身に付き、職場での態度や仕事への取り組み方も改善されることです。
◎自転車の状況もときどき点検すると、外国人材の交通安全につながります。