
1号特定技能外国人は制度的には最長5年間雇えるものの、途中で転職されてしまうリスクもあります。一方、技能実習や育成就労では、3年間働いてもらえる確率が高い点が魅力です。技能実習から雇い始める場合、技能実習の3年間に会社のことをよく知ってもらい、職場にもなじんでもらえれば、「技能実習+特定技能1号=8年」の継続雇用も見込めます。特定技能と技能実習について、実際に期待できる勤務年数や両制度の組み合わせを意識した選び方を紹介します。
◆このページの内容
- 技能実習は原則3年、特定技能は最長5年――ここから考え始める
- 特定技能では転職リスクを意識しておく
- 「技能実習(育成就労)+特定技能1号=8年」という考え方
- 技能実習(育成就労)の3年間で会社をよく知ってもらう
- まとめ
技能実習は原則3年、特定技能は最長5年――ここから考え始める

特定技能外国人を雇用した方がよいか、技能実習生を雇った方がよいかを検討する際に、最初に考えていただきたいのは、その外国人材を最低何年間、雇用したいかという点です。
特定技能1号では最長5年間働くことができます。技能実習の場合は3年間安定的に働いてくれることが多いです(4~5年目も働ける技能実習3号は2027年になくなります)。
まず、この「特定技能1号は最長5年」「技能実習は3年」という雇用可能期間をベースに考えていきます。
ところで、外国人材に何年間働いてもらいもらいたいかということを考える前に、もし、「特定技能のコストは安く、技能実習は高い」とお考えの場合は下記の記事をお読みください。
これらの記事では、「初期費用もランニングコストも必ずしも技能実習の方が高いとは限らない」といったことを説明しています。「技能実習のコスト>特定技能のコスト」とは限らないのであれば、何年間働いてもらえるかという観点で選ぶことが大きな意味を持ちます。
特定技能では転職リスクを意識しておく

外国人材に働いてもらえる年数で考えた場合、特定技能1号は最長5年間働いてもらえます。そして5年経ったときに要件を満たしていれば、特定技能2号に移行して、その後は(大きな問題を起さなければ)年数の制限なくいつまでも働いてもらうことができます。
ただし、特定技能1号から雇い始める場合にはある大きなリスクがあります。それは、特定技能は自由に転職できますので、いつ転職するかわからないということです。ですから、「最長5年働ける」といっても、実際に5年間まっとうしてくるかどうかは分かりません。
また、1号特定技能外国人に特定技能2号に移行して5年を超えて働いてもらおうと考えておられる経営者も多いことと思います。その場合、頭に入れておかなければならないことは、2号特定技能外国人は日本語力も社会的信用力もかなり高いので、1号のときよりも転職先をたくさん選べるようになるということです。その場合でも自社に残ってもらえる自信・根拠があるかどうかも自己点検する必要があります。
実際のところ、1号・2号を問わず特定技能外国人には転職する人もたくさんいます。例えば、大きな人材紹介会社が多額の広告費や求人ネットワークを使って、すでに国内で働いている特定技能外国人たちの目に求人広告を毎日大量に届けては応募を引き出し、求人を出した受け入れ会社にその人材を紹介しています。そして、このビジネスで大きな利益を得ています。
紹介を受けた特定技能外国人が6カ月以内に離職した場合は、人材紹介会社から補償を受けられることも多いですが、6カ月を超えて早期に離職した場合、離職された企業の損失は計り知れません。
大手人材紹介会社に特定技能外国人の紹介を依頼する場合、50万~70万円の紹介手数料を取られることもざらにあります。また、登録支援機関等を通じて海外から人材を受け入れる場合は、紹介手数料はもっと低額ですが、入国前教育に対する「講習委託費」(または「送出機関への紹介手数料」)なども負担します。
しかし、いずれの外国人材も転職自由なので、数カ月で辞めてしまうケースが多々あります。そうなると、また一から人材を募集して一から教育をしなければなりません。これにはまた大きな費用がかかってしまいますし、仕事を一から教え直す労力も大変です。
もちろん、外国人材を多数雇用し、外国人の中間管理職を置いているような大きな会社では、外国人材数人が辞めても、新しく人材を雇用し教育することは中小企業に比べれば容易で、それほど大きな痛手ではないかも知れません。しかし、小さな規模で外国人材を雇っている中小・零細企業の場合はそうはいきません。せっかく雇った特定技能外国人が半年や1年で辞めてしまうということがたびたび起こると、生産やサービス提供が不安定になりますし、新しい採用や教育にかかるコストについても頭を痛めることになります。
「技能実習(育成就労)+特定技能1号=8年」という考え方

こうしたことを考えると、技能実習の場合、大半の実習生が3年間安定的に働いてくれるということは、とりわけ中小企業にとって大きな魅力です。
2027年から導入される育成就労制度では、来日2年目か3年目(職種によって異なる)から自由に転籍できることになりますが、雇用主が適正雇用を提供する限り、大半の育成就労外国人は技能実習の場合と同じように3年間安定的に働いてくれる可能性が高いと期待する人が多くいます。
このように技能実習や育成就労では3年間の安定雇用が高い確率で見込めるほか、その3年間が終わった後、外国人材に特定技能に移行して社内に残留してもらえると、もとの3年に特定技能1号の5年間がプラスされて合計8年間働いてもらえる可能性が出てきます。また、特定技能2号に移行して会社に残ってもらえると、期限なく働いてもらうことができます。
技能実習(育成就労)の3年間で会社をよく知ってもらう

技能実習(または育成就労)から特定技能に持ち上がる場合、特定技能1号から始める場合との大きな違いは、技能実習の3年間で会社の価値をよく知ってもらい、引き続きこの会社で働きたいという気持ちに持っていくためのチャンスの期間が長いということです。
特定技能の場合、最長5年働けるといっても、いつでも自由に転職できるので、必ずしも5年間働いてくれるとは限りません。会社の本当の良さを知ったり、社風や上司・同僚になじむ前に辞めてしまう可能性もあります。
しかし、技能実習では原則3年間働いてくれますので、その間に会社の長所も短所も十分に分かってもらうことができますし、人間の感情として職場や上司・同僚に愛着がわくこともあります。
このため、技能実習の3年間が終わった後、地方の中小企業であっても、その会社に残留して特定技能で引き続き働いてくれる外国人材もたくさんいます。
そして、技能実習から持ち上がった場合、特定技能1号で5年間働き切ってもらえる可能性は、特定技能1号から始める場合よりも大きいです。なぜなら、3年間働いてくれたという実績があり、他社に移れるチャンスを放棄して残ってくれたという経緯もあるからです。引き続き適正雇用の努力をすれば、特定技能でも長く働いてくれる可能性が高いと言えます。
また、雇う側としても技能実習の3年間に、その人材の適正や勤務姿勢などを十分に見きわめることができますので、優秀な人材だけを残すことができます。技能実習(または育成就労)が修了した時点で継続雇用義務はいったんなくなりますので、場合によってはその時点で雇用を終えることもできます。一方、特定技能で雇い始めた場合、本人の適性に問題があっても、日本人の労働者と同じで正当事由がなければ解雇することはできません。
まとめ

このページのまとめ
・外国人材を特定技能から雇い始める場合は、制度的には最長5年間働けるものの、実際には途中で転職されてしまうリスクがあります。一方、技能実習や育成終了で雇い始める場合は、3年間働いてもらえる確率が高い点が魅力です。
・技能実習や育成就労が修了した後、特定技能1号に移行してさらに最長5年間働き続けてもらうこともできます。つまり、技能実習から雇い始めて特定技能への持ち上がりが実現すれば、「技能実習+特定技能1号=8年」を見込むことができます。
・技能実習では、3年の間に会社のことをよく知ってもらい、職場にも上司・同僚にもなじんでもらえる可能性がありますので、最初からいつでも転職できる特定技能に比べ、長期定着に導けるチャンスが大きいです。