定着ノウハウ

〈外国人定着の工夫〉外国人寮の内容は採用・定着に大きく影響する

日本の賃金が他の先進諸国に比べて低くなり、外国人材の就労先としてかつての人気はありません。そのような中、外国人材から選ばれるために、給与や職場環境に可能な範囲で配慮することはもちろん、外国人材が数年間住む寮の内容にも気配りが必要になっています。外国人材に提供する寮については何に気をつけたらよいのでしょうか?また、それによって外国人材の受け止め方はどう変わるのでしょうか?具体例を含めて紹介します。

◆このページの内容

送出機関の学生寮と従来の技能実習生寮

送出機関の寮(ベトナムで筆者撮影)

私はインドネシアやベトナムなどの送出機関を訪問取材する際、たいていその送出機関の寮も見学します。送出機関の寮では、複数の生徒(外国人材)が一つの部屋で寝泊まりするのが通例です。二段ベッドが数本から十数本置かれた部屋が多いですが、普通のベッドが数本とか、床にマットレスを敷くというケースもあります。

このような現地の寮を参考にしてか、日本の受け入れ事業者が技能実習生や特定技能外国人を住ませる寮も、一つの寝室を複数の人材でシェアさせる事例が主流でした。技能実習生の寮は下記の基準を満たしていればよいので、寝室をシェアさせても二段ベッドでも規定には違反していません。特定技能の場合は1人あたりの広さが7.5㎡以上になります。

  • 居室全体の面積を居住人数で割った面積が1人あたり4.5㎡以上
  • 就寝時間が異なる場合は寝室を分ける
  • 個人別の収納設備(施錠可能)の設置

トレンドは粗末な寮から小ぎれいな寮へ

しかし、日本の賃金が長年すえ置かれ、さらに極端な円安も進行したため、2025年現在、欧州と比べて日本の賃金は約半分で韓国と比べても結構下回っています。このため、海外に出稼ぎに行く外国人材の間で日本の人気は低下しています。

そこで、受け入れ事業者は給与・賞与について自社の体力の範囲内でなるべく配慮するほか、寮の内容や立地にも気を配るケースが増えています。

外国人材は単に働くだけではなく、日本で数年間生活をします。その生活の質を少しでも良くすることで外国人に選んでもらい、また定着もしてもらいたいという願いです。

逆に、最近は、劣悪な寮だと外国人材が長期定着しませんし、寮に関する評判が送出機関の後輩たちの間に広まって、新しい求人に良い人材が応募しないという事態にもつながります。

外国人材から選ばれるために

人材輩出諸国の所得も上がり、技能実習生や特定技能外国人は出稼ぎ労働者といっても、昔と比べると経済的な切迫感は減っています。

私は取材先の企業から依頼され、外国人材の採用面接にオンラインで立ち会って助言することがあります。その際にインドネシアやベトナムの応募者が家庭の経済状況を説明するのを聞いていると、ひと昔前に比べて家庭の収入がずい分、上がりました。地域によって異なり、都会に近いエリアは比較的裕福で田舎に行くほど貧しいという傾向はありますが、全体的な状況は数年前と比べてかなり改善しています。

そんなとき、私は「それだけの収入があれば、あなたが日本に働きに行かなくても、家族は十分に生活していけるのではないですか?」と質問します。すると、候補者たちは多くの場合「その通りです」と答えます。

かつては、日本で働いたお金を実家に送って家族の生活を支えるということが大きな目的となっていました。今もその目的はありますが、実は、仕送りをしなくても、家族はつつましく暮らそうと思えば暮らせる場合が多く、切迫感はありません。

それよりも、将来帰国したら飲食店やバイクの店を開きたいなどという自分の夢や目標のために来日する人が増えています。

このため、「お金さえもらえればどんな寮に住んでもかまわない」という、ひと昔の前の外国人材の気質とは変わってきています。最近は、寮の内容を含めてさまざまな待遇や生活環境も吟味して就労先を選ぶという傾向が強くなっています。

寮の質が外国人材の定着に影響している事例

「給料は安いですが、きれいな寮に住めてうれしいです」と話す実習生ら(筆者撮影)

寮の質が良いことも手伝って定着に成功している事例

賃金の安い地方都市で、技能実習への応募者を十分に確保したり、特定技能外国人に長期定着したりしてもらいたい場合、彼らに提供する寮の内容や立地も重要です。

北陸のある建築業者で働く実習生の寮(上の写真)を訪問したことがあります。2 LDKの物件に2人の男性技能実習生が住み、リビングは共同ですが、寝室は1人1室ずつありました。部屋も新しく、立地も住宅街の中にあって住みやすい環境でした。

この2人は賃金水準の低い福井県の中でも建築業としては特に低い給料で働いていました。しかし、経営者が親切にしてくれることや送出機関社長も時々日本に訪ねてきて励ましてくれること、そして寮もきれいで個別の寝室もあることから、「少なくとも3年間の技能実習が終わるまでは、給料が低くても、この会社でがんばります」と話していました。

粗末な寮に住み、大半の実習生が3年でやめたいと話している事例

逆に、私が訪問した中でひどいと感じたのは、中部地方の田園地帯で築50年を超える平屋を寮に使い、1軒に2人の女性技能実習生を住ませていた介護福祉施設の事例です。部屋もトイレもとても古い上、1人がトイレに行くには、もう1人の寝室の中を通らなければならないという間取りでした。

この施設の実習生たちは日本語力も高く、仕事で大活躍していましたが、施設の人がいないところで4人に聞くと、だれもが「3年間の技能実習が終わったら他の施設に移ります」言っていました。

これは、給料が決して高くはなく、周囲に店がほとんどない不便な地域に住んでいるうえ、粗末な寮に住まされ、「勤務先から大事にされている」と感じられないことが原因です。

彼女たちはその施設での技能実習1期生です。彼女たちの間での職場の評判が後輩の募集に影響するので、今後、この施設には良い人材が応募しにくくなることが懸念されます。

きれいな寮をPRして応募者が急増した事例

近畿のある介護福祉施設では、技能実習生の給料が業界の中ではそれほど高くはないため、実習生の募集に苦戦していました。しかし、実習生やそこから移行する特定技能外国人、介護福祉士の人数が計数十人規模なので、自前で高層マンションを建てて外国人寮とし、明るくきれいな内装で、家具や電化製品もスタイリッシュなものをそろえました。そして、外国人材の募集用PRビデオの中に寮の様子や先輩たちの声も盛り込むと、その年から応募する人材が急増したそうです。

個室(プライベート空間)の提供を

外国人寮でもプライベート空間の提供を

最後に、日本に慣れていない外国人材の場合は、1つの物件に複数の人材を住ませる方が良いと思われます。母国から遠く離れていきなり夜1人になると寂しがる場合も多いからです。

また、部屋の割り当てとしては、リビングなどは共同利用で、寝室は1人1室与えるケースをよく見かけます。外国人材の長期定着を望むなら、特定技能の場合はもちろん、技能実習生にもプライベート空間(個別の寝室)を提供することが必須になりつつあります。

九州で働く女性の技能実習生は広いワンルームに2人で住んでいますが、本人たちに本音を聞くと、「本当は寝室を分けてほしい」とのことです。2人とも日本語力もあり、働く意欲も高く、優秀な人材ですが、技能実習3年目を終えるときにどのような判断をするのか気がかりです。

技能実習生や特定技能外国人は他社の外国人材ともさまざまな情報を交換しています。他社の寮と自社の寮の内容があまりに違うと、今の会社で長く働くかどうかの判断に影響します。

3人同居は避けるが無難

一つの物件に3人で住ませると、どうしても2人対1人という構図になりがちで、疎外された1人が居心地よく暮らせません。これによって長期定着が妨げられることもありますので、一つの物件に2人または4人以上で住んでもらうことが無難なようです。

また、人材の年齢が上がるとか、日本にかなり慣れた場合は、1人1物件または家賃補助を支払って自分で好きな物件に住ませるなどの方式に移行することも検討できます。

寮の立地については、別の記事でくわしく説明します。

まとめ

このページのまとめ

・日本の受け入れ事業者が外国人材に提供する寮では、一つの寝室を複数の人材にシェアさせるケースが主流でした。しかし、外国人材の就労先としての日本の人気が下がったこともあり、募集や定着への影響を考えて寮の内容に気をつかう事業者も増えました。

・劣悪な寮だと外国人材の長期定着に悪影響が出ますし、送出機関の後輩たちの間にもその評判が広まって、新しい求人に良い人材がなかなか集まらないという結果になりかねません。

・経済的に切迫した状況で日本に来る人材が減ったため、「お金さえもらえればどんな住宅に住んでもかまわない」という考え方の人も減りました。

・「給料は安いが、寮がきれいだし社長も親切なので、技能実習が終わるまではがんばる」と話す実習生▽「給料や寮に不満があるので、3年経ったらよそに移る」と実習生たちが口をそろえる介護施設▽きれいな寮を新築し、募集PRビデオに映像を盛り込んだところ、応募者が急増した介護施設――といった事例があります。

・外国人材にもプライベート空間(個別の寝室)を提供するのが今後の長期定着には必須です。

・3人での同居は避け、一つの物件に2人または4人以上で住んでもらうのが無難です。

-定着ノウハウ

error: Content is protected !!