
送出機関を訪問したら、人材募集力や日本語教育の内容を中心に説明をしてもらいましょう。また、一番重要なのは、その機関が実際に生徒(人材)にどのような日本語会話力を身に付けさせることができるかという点です。送出機関への具体的な質問項目や施設見学での着目ポイント、そして、生徒たちと対話して日本語教育力を短時間で見きわめるノウハウを紹介します。
1分で読める記事の要点〈時間のない方はこちらだけ!〉
ポイント解説

・責任者から説明を聞く際のポイント:送出機関で責任者から説明を聞く際には次の点を重視してください。日本に送り出すまでの授業期間(月数・日数)と、自習時間も含めて1日に日本語学習に取り組む時間が、非常に重要です。教師陣についてもチェックします。
- 生徒募集の方法や入校時のチェック
- 日本語授業の概要・特徴
- 授業期間、1週間の授業日数、1日の授業時間
- 自習時間、自習時間の管理体制
- 授業で使う教材
- 教師陣
・授業を見る、生徒と話す:数人に5~10分話しかけて受け答えを聞くと、その送出機関の日本語教育力がおおよそ分かります。短い質問で答えやすく分かりやすい日本語を使ってください。
・日本人教師はいた方がよいか:日本人教師がいる方がよいです。しかし、いない場合でも、教室で対話チェックした生徒たちの会話力さえ高ければ問題ありません。
・本当は複数の送出機関を見比べるのが良い:良い送出機関を見つけるには、複数の送出機関を訪問し比較するのが一番良い方法です。さしあたっては監理団体や組合に依頼するしかありません。
・施設などのチェックポイント:施設見学では例えば次のような点に着目してください。
- 教室の空調
- トイレ掃除の状況
- 食堂や寝室の清潔さや快適性
- 実習施設
・その他:学習に集中させるため昼間は生徒の携帯電話を預かる送出機関もあります。このような送出機関の教育力は高い場合が多いです。
◆このページの内容
責任者から説明を聞く際のポイント

送出機関を訪れたら、多くの場合、経営者や営業責任者などがその機関の特徴について説明をしてくれます。しっかり対応してもらえるように、監理団体や登録支援機関を通じて先方にあらかじめお願いしておいてもよいでしょう。
説明をひと通り聞き、もし、以下のような事柄について十分な説明がなかった場合は、こちらから質問してください。十分に答えられない場合は、答えられる人を呼んでもらいましょう。
- 生徒募集の方法や入校時のチェック
- 日本語授業の概要・特徴
- 授業期間(何カ月間教えるか)、1週間の授業日数、1日の授業時間
- 自習時間、自習時間の管理体制(質問対応や見回りの教師がいるか)
- 授業で使う教材
- 教師陣
生徒募集の方法や入校時のチェック
生徒をたくさん集める力があり、応募生徒を少しふるいにかけてから入校させたり面接に出したりする送出機関の方が良いです。くわしくは関連記事を参照してください。
授業期間、授業日数、授業時間
「生徒(人材)の1日の集中力に限界がある」などの説明で、授業時間を午前だけなど短く設定している送出機関も結構あります。しかし、日本に送り出すまでの授業期間(月数・日数)と、自習時間も含めて1日に日本語学習に取り組む時間は、非常に重要です。私がさまざまな送出機関で生徒(人材)と対話を重ねたところ、通算授業時間(授業期間×1日の授業時間)が長いほど、会話力の高い生徒が育っていました。
自習時間
自習時間も重要です。自習時間には復習や宿題をします。その時間を1日何時間設けているのがまず大事です。また、そこに付き添いの教師がいるかどうかで自習の質が変わってきます。
教材
教材は多くの場合、「みんなの日本語」を使いますが、最近は特定技能になるための日本語試験の一つJFT-Basicへの対策で「いろどり」を併用する送出機関も増えました。
「みんなの日本語」も良いのですが、「できる日本語」などほかのテキストを使っている場合は、教育責任者が自分たちの教育方針にこだわりや自信をもっていることの表れです。また、質の高い教師をそろえた送出機関では、オリジナルテキストを作って使っている場合もあります。
教師陣
教師と生徒の数や、教師の中で日本語能力試験(JLPT)N1、N2、N3合格者は何人かも聞きます。
中にはN4(JLPTの下から2番目のレベル)の教師もいますが、個人的にはN4の教師に教えさえる送出機関はレベルが低いと感じます。
N2、N3の教師には元技能実習生もたくさんいます。日本人とほとんど会話できないレベルの教師も多いですが、その場合、やはり生徒の平均的な会話力は低いです。N2、N3でも会話力のある教師ならまだよいです。
また、N1、N2の教師の学歴や日本語教育歴を聞き、有名大学の日本語学科を出ている教師や教育経験豊富な教師が複数いるようなら、その機関は教育にコストをかけており、有望と言えます。学歴の高い教師がいなくても良い教育をできる場合もありますが、何人かはそういう教師を配置している機関の方がベターです。
授業を見る、生徒と話す

挨拶と単なる見学
次に実際の日本語教育の授業を見学させてもらってください。教室に入ると、国によっては生徒たちが一斉に立ち上がって「お客様、いらっしゃいませ。よろしくお願いします!」などと大きな声で挨拶してくれますので、笑顔で受け止めて挨拶を返します。
もし、そこで発言を求められたら、自社の紹介などを分かりやすい日本語で大きな声でゆっくり話してください。一番のコツは複文をなるべく使わず、短い文を重ねていくことです。初心者にはその方が聞き取りやすく理解しやすいです。
挨拶が終わったら授業を見学させてもらってください。授業は、5~10分程度なら遠慮せずじっくり見学してください。授業の中で教師が生徒に答えさせたり、ロールプレイをさせたりすることもあります。その受け答えや話しぶりだけを見ると、生徒たちがいかにも日本語ができそうな感じがします。
しかし、実際に生徒たちに話しかけてみると、そうでもなく、がっかりすることが多いです。どうやら、ロールプレイでは決まった受け答えを何度か繰り返しているので話せますが、それを少しばかり繰り返しただけでは最低限の会話力が身に付くわけでもなさそうです。
生徒たちに話しかける(最重要)
一番大事なのは生徒との会話です。最初の挨拶のときに話しかけてもいいですし、少し見学してから教師にお願いして対話をさせてもらってもいいです。
短い質問で答えやすく分かりやすい日本語を使うように心がけてください。その受け答えによって生徒たちの会話力を判断します。
多くの場合、日本語学習を始めて3カ月以上経たないと、簡単な会話も難しいので、できるだけ入国を間近に控えた学習期間の長い生徒たちのいるクラスを見学させてもらい、そこで生徒との対話を行ないます。
数人に5~10分話しかけて受け答えを聞くと、その送出機関の教育力がおおよそ分かります(会話力がとても低い場合はもっと短い時間で分かります)。どの生徒もほとんど受け答えできないようであれば、自社が依頼した人材も同じような状態でしか送り出してもらえないと覚悟してください。その場合、その日の採用面接で必ずしも無理にだれかを選ばなければならないということはありません。
どんなに大規模な送出機関であっても、あるいは経営者や責任者がどれだけ立派な説明をしても、実際の生徒の会話力が低ければ、そこから受け入れる人材の日本語力には大きな期待はできません。
教室の人数

各教室の生徒数にも注目してください。語学教室では、1クラスの規模はなるべく少ないほうが良いので、1教室20~25人ぐらいまでに抑えているかどうかをチェックしてください。
もし、1教室に30人以上いる場合は、どの教室も同じぐらいの人数か教師に確認します。どの教室も大人数なのであれば、少し問題です。
日本人教師はいた方がよいか
日本人教師がいることを売りにしている送出機関もたくさんあります。確かに、正しい日本語を聞き取る力を身に付けるには、日本人教師との会話を積み重ねることが効果的です。
ただし、日本人教師の質を確認しておく必要があります。海外では、日本語教育のスキルや経験、素養がなくても、ただ日本人であるというだけで日本語教師になれる場合があります。しかし、教える意欲やノウハウが乏しい日本人が教えても、生徒の力はそう大きくは伸びません。できれば、その教師にも会って、教育経験や教育方針を聞くとよいでしょう。
最近は、日本人教師がいなくても、さまざまなヒアリング教材を使ったり、オンラインで日本人教師の会話授業を行ったりしている送出機関もあります。これはこれで効果的な方法です。
日本人教師がいなくても、教室で対話チェックした生徒たちの会話力さえ高ければそれでよしとしましょう。送出機関の日本語教育力を判断するための最大の基準は、数カ月学んだ生徒たちの実際の会話力(特に聞き取って理解する力)だからです。
本当は複数の送出機関を見比べるのが良い
良い送出機関を見つけるには、こうしたポイントを頭に入れて複数の送出機関を訪問し比較するのが一番良い方法です。しかし、通常、自社が求人を出した先の送出機関しか見学できません。
そこで、複数の機関を比べたい場合、さしあたっては監理団体や登録支援機関にお願いするしかありません。団体・機関が複数の送出機関と取引をしている場合は、それらの送出機関について説明を聞いて比較し、どの送出機関に求人を出してもらうか指定しましょう。取引先の送出機関の長所・短所について十分に説明できない監理団体や登録支援機関は避けた方が無難です。
私が情報交換をしているある監理団体はコストをかけて良い送出機関探しを日ごろから行ない、顧客から要望があれば、複数の送出機関を紹介し、現地訪問にも同行しています。
※良い送出機関を探すのにどうしてもお困りの場合は、ご相談ください(ただし、外国人雇用に関して取材させて頂く場合があります)。連絡先:contact@teichaku-kikou.com
施設などのチェックポイント

送出機関を見学したら、施設についてもチェックをします。
エアコン
熱帯地域の送出機関の場合、私が一番にチェックするポイントは教室の空調設備です。暑い季節でも扇風機だけで勉強させている機関の場合、生徒が充分に勉強に集中できない傾向があります。そこにコストをかけるかどうかは、経営者の教育姿勢を示す一つの指標になります。
トイレ
実習生が当番でトイレを掃除することが多いのですが、その掃除がきれいにできているかどうかをチェックします。これは外国人材に規律を学ばせる狙いがあり、見学の際に重視する人もいますが、個人的には優先順位は高くないと思います。
ただし、日本に入国してからの寮の使い方については、受け入れ事業者の費用負担(原状回復費用)にもかかわってきますので、きちんと規則(使い方や掃除のルール)を決めて守ってもらう方がよいでしょう。そのことが仕事での規範意識や規律にもつながります。
食堂、寝室
食堂や寝室については、清潔に保たれているか一定の快適性があるかをチェックしてください。これらも送出機関が生徒をどのぐらい大事に考えているかを示す指標の一つになります。
実習施設
介護や建築、工場での作業に関して実技訓練施設を併設している送出機関もあります。同種の作業経験を必須とする場合や入国前の実技訓練を重視する場合は、こうした実技訓練施設やそこでの指導内容をチェックしてください。
その他

授業や自習に集中させるため、昼間は生徒から携帯電話を預かり、携帯電話の辞書アプリを使ったり親に電話をかけたりする場合だけ、教師に許可を取って使わせるという送出機関もあります。
そのような送出機関は所定の日数・時間だけ授業を提供すればよしとするのではなく、できるだけ日本語力をつけさせたいと考えて教育をしています。生徒の日本語会話力も高い場合が多いです。
このように、送出機関ごとの工夫やこだわりがあれば、着目してください。
まとめ
このページのまとめ
・日本に送り出すまでの授業期間(月数・日数)と1日に日本語学習に取り組む時間が非常に重要です。送出機関を訪問したら、そこを重点に聞いてください。また、教師陣についてもチェックしてください。
・教室で生徒たちに話しかけて受け答えを聞くと、その送出機関の日本語教育力がおおよそ分かります。送出訪問で一番大事なチェックポイントです。
・日本人教師がいなくても、対話した生徒たちの会話力さえ高ければ大丈夫です。
・本当は複数の送出機関を見比べるのが良いです。
・施設見学では、教室の空調やトイレ掃除の状況、食堂や寝室の快適性、実習施設などに着目してください。