基礎知識

〈基礎〉働く外国人にとっての日本の魅力とは? 

外国人材の就労先として日本は決して人気が高くありませんが、適正な受け入れ努力をすれば、良い外国人材は獲得できます。「低賃金でも日本で働きたい」という外国人材たちは日本のどこに魅力を感じているのでしょう? 地理的な近さや治安の良さなど、外国人から就労先として見た場合の日本のさまざまな魅力についてお伝えします。

◆このページの内容

賃金面では人気下降

移住労働者(外国で働く人)が外国に出稼ぎに行く最大の目的は何と言っても母国より高い収入を得るためです。その意味では、日本は就労先として比較的魅力が低い国になっています。

賃金すえ置きと円安で日本は稼げない国に

かつて「ジャパン・ドリーム」とも呼ばれた日本の技能実習ですが、今は日本の技能実習も特定技能も外国人材の就労先としてあまり人気がありません。日本の賃金が長年すえ置かれた間に他の先進諸国では普通に賃金が上昇し、日本の賃金水準が世界的に見て低くなってしまったからです。

また、2020年代の歴史的な円安も外国人材から見た日本の賃金の価値をさらに押し下げています。円で受け取る給料を母国に送った場合、両替で得られる現地通貨が円高の場合と比べて大きく減っているからです。

その結果、2025年現在、欧州の工場や建築現場の作業員の賃金は日本の賃金の約2倍ですし、2024年の韓国の雇用労働制の平均月給(28.5万円)は同じ年の日本の技能実習(21.7万円)や特定技能(23.5万円)より数万円高くなっています。

東南アジアでも格差縮小を実感

日本の賃金安や円安の影響は東南アジアを旅行しても感じます。

私は2018~2025年に40回近くベトナムやインドネシアなど東南アジア諸国を取材・調査で訪れました。2019年にベトナムの両替店で1万円を両替すると最大で220万ドンになりましたが、2025年は170万ドン台です。また、現地では物価上昇が続いているため、1万円を現地通貨に両替した場合の購買力はそれ以上に下がっています。私の体感としては3割ぐらい下がった感じです。

同じ期間に日本の賃金も少し上がったとはいえ、30%も上がっていませんので、ベトナムから来日する人材にとっては日本でもらえる給料の価値はずいぶん下がったということになります。もちろん、他の送出諸国についても同じことが言えます。

地理的に近い

しかし、「給料が少し安くても、日本で働きたい」と言ってくれる外国人材たちもまだいます。彼らは日本のどこの魅力を感じてくれているのでしょうか?

英語が堪能なため欧米でも人気のフィリピン人材ですが、フィリピンで送出機関を長年経営している日本人に聞くと、フィリピン人が就労先として日本を選ぶ場合の大きな理由を3点挙げました。

  • 日本は欧米に比べて地理的に近い
  • 日本は治安が良い
  • 日本では差別が少ない

順に説明していきましょう。

マニラ発東京行きの飛行時間(直行便)は平均約4時間20分、ハノイ発東京行きは平均約5時間、ジャカルタ発東京行きは平均約7時間半です。直行便も安い値段でたくさんあります。

これに比べて、マニラ発フランクフルト行き(直行便)は平均約15時間半、ロサンゼルス行きは平均約13時間かかります。直行便は費用が高いので、乗り継ぎ便を使うともっと長くかかります。

アジア・東南アジア諸国から日本に出稼ぎに来て一時帰国する場合、フライトには往復各1日ずつあてればすみますので、仕事を1週間も休めば、故郷に5、6泊することができます。それに航空会社や時期を選べば、フライト代も往復数万円ですみます。

このため、日本で働く外国人材は、技能実習の場合は3年間ほとんど帰国しませんが、特定技能や技人国(技術・人文知識・国際業務)の場合、年に1、2回帰国するのは普通ですし、特別の用事がある場合も比較的気軽に帰国することができます。

しかし、欧米ではそうはいきまん。フィリピンの送出機関経営者によると、「米国からフィリピンに帰ろうと思えば、往復だけで3、4日間かかりますし、飛行機代も高いので、10日間以上休みを取る必要があります。そのうえ飛行機代も高いので、一時帰国は本当に大変です」と話しています。

このように日本はアジア・東南アジア諸国からの地理的な距離の近さが魅力になっています。

実は私も日本の新聞社の特派員としてかつてジャカルタに3年間住みました。私自身はめったに帰国しませんでしたが、妻は幼い子どもを連れて毎年3回ぐらい一時帰国していました。

治安が良く、 差別も少ない

欧米では日本の2倍の給料をもらえますが、日本に比べると治安の面では劣ります。特に移住労働者の場合は、治安の悪い地域に住むことも多いため、不安を感じながら生活することもあります。また、銃社会の米国などでは拳銃やライフルによる事件も頻繁に起きています。

その点、多くの地域で女性でも夜間に一人で出歩ける日本の治安の良さは、外国人材本人にとっても、故郷で見守る家族にとっても魅力です。

また、フィリピンやベトナムの送出機関幹部らによると、「欧米ではアジア人に対する差別や蔑視を感じることも多く、送り出した人材たちから、実際の例をよく聞きます」とのことです。日本ではそのような差別を受けることが少なく、外国人材にとって治安の良さと並んで日本の魅力になっているとのことです。

都市機能が発達し生活が便利

外国人材は日本に単に働きに来るだけでなく、数年間日本で生活することになります。したがって、その国でどのような生活ができるかという点も移住労働者が就労先を選ぶ際の材料になります。

その点、日本は街がきれいで清潔で商業施設も充実していますし、公共交通機関が発達し、車がなくても移動が便利です。また、賃貸住宅も清潔で機能的な家が多く、比較的快適に暮らせます。

そして、円安によって賃金安が助長されているというデメリットの裏返しで、日本での生活自体は他の先進諸国に比べて安値で高品質のサービスや商品を手に入れることができます。

医療保険

日本では公的医療保険(健康保険など)の制度が整っており、技能実習や特定技能で働く外国人材も医療費の7割を健康保険で負担してもらえます。さらに、技能実習生の場合は通常、会社負担で技能実習生向けの特別な保険に入るため、残り3割の医療費もこの保険で負担してもらえることが多いです。特定技能についても同様の保険があり、加入するケースが増えています。

もともと高度な医療技術があるうえ、医療費の自己負担がこのように少ない点も外国人材にとって日本の魅力になっています。

特に特定技能2号や技人国の人材は家族を日本に呼ぶことができますが、その場合、日本の医療水準の高さや医療費負担の小ささは大きな安心材料と言えます。

アニメなどさまざまな日本文化

世界に冠たる日本のアニメ文化

アジア・東南アジアの若者たちと話をすると、日本アニメが好きだという人がたくさんいます。「ドラえもん」や「名探偵コナン」、「ちびまる子ちゃん」に始まり、「NARUTO-ナルト-」や「SPY×FAMILY」、「鬼滅の刃」など、数多くの日本アニメが世界中の若者の心をつかんでいます。

こうしたアニメをきっかけに日本に興味を持った若者も多く、日本での就労を考える大きなきかっけになったというケースもよく聞きます。

日本の労働文化

採用面接に立ち会うと、日本を選んだ理由を聞かれた外国人材の多くが「日本の働き方を学びたい」という趣旨のことを言います。その全部が本心かどうかは分かりませんが、時間を守るとか品質を大事にするといった日本の労働文化は諸外国から尊敬されており、それを学びたいという人材も実際にいるようです。

観光地が多い

日本には東京、富士山、京都、大阪を始めとして魅力的な観光地がたくさんあることも魅力です。採用面接で「日本について知っていること」を聞くと、「富士山」や「桜」を挙げる人が多いです。採用されて日本で働くと、長期休暇時に同じ国の仲間と連れだって日本各地を旅行する外国人材がたくさんいます。

まとめ

このページのまとめ

・他の先進諸国と比べて日本の賃金は安いため、日本は技能実習でも特定技能でも外国人材の就労先としてあまり人気がありません。

・しかし、それでも日本で働きたいという外国人材はいます。大きな理由の一つは、日本がアジア・東南アジア諸国から地理的に近いことです。欧米と比べて安価・短時間で母国に帰れることは日本の魅力です。

・日本の治安の良さは、外国人材本人にとっても、送り出す家族にとっても魅力です。また、アジア人への差別や蔑視が少ないことも日本の魅力だと指摘する送出機関関係者たちがいます。

・日本は交通や商業施設などの都市機能が充実し、街も清潔で、住宅も機能的です。快適な生活ができることも日本の魅力です。

・高度な医療技術があるうえに、健康保険や技能実習生保険、特定技能外国人保険などのおかげで、医療費の自己負担が少ないことも移住労働者にとって日本の魅力になっています。

・日本のアニメが世界的に人気が高いことや、日本の労働文化が尊敬を集めていること、観光地が多いことも外国人材を引きつける要因になっています。

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