採用ノウハウ

〈外国人採用の鉄則〉外国人材の採用・定着に役立つ給与相場レポート(2025-26年版)

日本と人材送出諸国との賃金格差が縮小したうえ、円安も進み、外国人材にとって日本の賃金面での魅力は小さくなりました。「日本の求人なら外国人が何でも喜ぶ」という時代はとうに去り、今は、良い外国人材を得たいと思ったら、相場を意識した給料が不可欠です。そのためのカギとなるのはまず基本給と残業代です。特定技能外国人や技能実習生は残業を好みます。残業を割り当てる配慮の事例や業界ごとの手取り給料の相場についてレポートします。

◆このページの内容

日本はもはや「夢の国」ではありません

外国人が日本で働いておカネを貯めることが「ジャパニーズ・ドリーム」ともてはやされたのは昔のこと。日本の賃金が長年横ばいだったため、人材送出諸国との賃金格差はどんどん縮小しました。そのうえ円安も進行し、送出諸国の人々の海外就労先として日本の賃金面での魅力はずいぶん小さくなってしまいました。

そのような状況下で良い外国人材を安定的に確保していくには、給料や諸条件(寮の費用・内容、生活サポート、キャリシステムなど)についてよく検討しなければなりません。

その際、「日本の求人であれば、どんな給料や条件でも外国人材が喜んで集まる」という誤った認識をまず完全に捨てなければなりません。その上で、情報に通じた登録支援機関や監理団体などから情報を得ながら給料や諸条件を考えることが大切です。

平均相場を意識して給料を設定する

同じ職種・同じ地域での給与相場を知る

外国人材はさまざまな情報ネットワークで日本在住の外国人仲間とつながっています。そのネットワークの中で給料についても情報交換をしますので、職種ごとの給与相場もよく知っています。

したがって、良い外国人材を安定的・継続的に雇用するには、同職種・同地域での相場を意識して給料やその他の条件を設定することが大切です。そのためには、情報が豊富で適切なアドバイスをしてくれる登録支援機関や監理団体などと関わりを持つことが大事です。

もちろん、外国人材の応募や定着を左右するのは給料だけではなく、仕事内容やさまざまな待遇・条件も加味した総合的な「納得感」や「満足感」です。しかし、給料が相場を大きく下回っていると、納得や満足を得るためのスタートラインにも立てません。

残業代も含めた給料が重要

特定技能外国人や技能実習生の多くが、残業代や諸手当も含めた総支給額から税金や社会保険料、寮費などを差し引いた口座振込額を「手取り給料」と受け止め、その「手取り給料」の相場をよく知っています。

基本給だけでなく、その「手取り給料」が同じ職種・地域での平均に達していないと、良い人材が集まりにくいですし、採用後も長期定着は望みにくいということになります。

給与相場に関する業界情報の例

給与条件は良い外国人材を集めるためにも職場への長期定着にとっても重要です。ここでは、外国人材に関連する業界でヒアリングした給与相場情報をいくつか紹介します。

ただし、このような情報は常にアップデートされますので、情報が豊富で適切なアドバイスをくれる登録支援機関や監理団体などを選んで付き合うことが大切です。

◆給与相場などに関する情報

ベトナムの送出機関役員(2024年)

【国ごとの賃金相場など】
・ベトナムよりインドネシアやミャンマーの人材の方が、賃金相場が安い。ただし、ベトナム人材はまじめに働く人が多く、人材の質に対する評価が高い。

【ベトナムへの農業求人】
・農業の求人に若いベトナム人を集めるのは難しい。30代でもよければ、集められるが、手取り給料(税金や社会保険料、寮費等を差し引いた口座振込額)15万円以上が必要。手取り18万円なら、求人数の2倍の候補者を集めることができる。

【ベトナムへの建設求人】
・建設の技能実習も、30代後半や40代でもOK、タトゥーも小さければOKなど、求人条件を緩和すれば、応募者を集められる。その場合、手取りは15万円以上。若い人材がほしいなら、手取り18万円以上。
・建設には、日本人は応募しないし、就職してもすぐに辞める。外国人も最低賃金では集まらない。それを踏まえて求人条件を引き上げる監理団体や企業も増えた。
・大阪のある監理団体を通じて建設の実習生を毎年約30人送り出しているが、失踪者が非常に少ない。基本給が平均22万円(配管なら23万円)と条件が良いから。

【不人気業種】
・建設の中でも特に不人気なのはとび、型枠、鉄筋。建設以外に不人気なのは農業と縫製。こうした職種に人を集めるには、年齢等の条件を緩和するしかない。

【ベトナムへのその他の求人】
・それ以外の職種では年齢などの条件を緩和すれば、手取り13~14万円でも応募者を集められる。しかし、若い人を集めたいのであれば、最低15~16万円は必要。手取り17万円以上なら、若くて優秀な人材を十分に集めることができる。

北陸の監理団体幹部(2024年)

【特定技能や技能実習でのボーナス】
・北陸では最低賃金が安いが、定着率の高い会社では、外国人材にもボーナスを支給しているケースが多い。
〈例〉建築A社(とび):技能実習生にボーナス年30万円
〈例〉自動車整備B社:特定技能外国人に夏のボーナス30万円、技能実習生に10万円。冬は別途。

東京の人材会社社長のベトナム人(2024年)

【特定技能の首都圏での給与相場】
・当社が仲介する外国人材(国籍さまざま)の額面給料は特定技能で22~29万(残業代別)。建築は基本給27万円で残業なし。当社がメンターとしてフォローすることもあり、全体に早期退職者は少ない。

北関東の監理団体理事長(2023年)

【残業不可なら手当で補充】
・大手企業ほど残業は少ない。しかし、外国人材の手取り給料の平均相場を意識しているので、何らかの手当を付けて総額を水準以上に保つ例が多い。

首都圏の監理団体顧問(2024~25年)

【20時間以上の残業かほかの工夫】
・特定技能や技能実習の応募者を十分に集めたいなら残業20時間以上が必要。それができない場合は、寮費を安くするなど、手取りを増やす工夫を。

【ベトナムへの求人】
・ベトナムの建設人材(技能実習生)を集めるには手取り18~19万円が適正。
・食品加工なら手取り13~14万円でも集められる。

【インドネシアへの建設求人】
・インドネシアでも地方によっては建設の求人への応募者が激減している。

特定技能外国人と技能実習生の平均賃金(統計)

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2024年)でも特定技能外国人や技能実習生の平均賃金を公表していますので参考に紹介します。

※サンプル数が少ない産業を除いて紹介します。
※前章では手取り給与に関する情報を紹介しましたが、この統計では税金や社会保険料などを差し引く前の給与総額が用いられています。

◆技能実習生の平均賃金  単位:千円

区 分

全 体

就労1年目

就労2年目

就労3年目

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

全体182.750.721,276178.69.16,411180.051.312,506208.5163.12,095
建設業199.686.03,170183.16.2846187.851.312,506208.5163.12,095
製造業177.845.714,058174.310.64,062177.748.68,555187.2126.71,271
卸売業,小売業174.624.61,428179.22.8528165.627.5783214.4104.0115
宿泊業
飲食サービス業
187.658.7554179.85.8260187.195.0251237.2168.832
医療,福祉197.768.8798188.712.4286202.395.7487196.8171.816

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」より

◆特定技能外国人の平均賃金  単位:千円

区 分

全 体

就労1年目

就労2年目

就労3年目

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

所定内
給与

年間賞与
その他
特別給与

労働者

全体211.299.113,893206.69.45,515208.7108.74,398212.6199.72,265
建設業255.7140.31,813193.712.7621246.3212.1387240.2298.5224
製造業198.986.97,533189.010.42,372196.978.42,645205.6139.91,615
医療,福祉210.6136.61,965202.613.2954210.3172.6663232.2471.1275

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」より

外国人材に残業を割り当てる配慮

働き方改革の影響もあり、大手企業を中心にどの現場でも以前と比べて残業が少なくなりました。

しかし、特定技能外国人や技能実習生には残業代をたくさん稼ぎたいという人が多いので、外国人材になるべく残業を多く回すように工夫している受け入れ事業者も多数あります。

配慮事例①

関西のある食品工場では、日本人の残業はかなり減ったのですが、特定技能外国人が残業をほしがるので、彼らには残業を多めに回すように配慮しています。

配慮事例②

関西の金属加工メーカーでは、日本人従業員が残業を嫌がる一方、特例技能外国人たちは歓迎するので、残業の大半を外国人材に割り当てています。

配慮事例③

数カ所の工場を持つ九州の農産品加工会社は、その日に残業がある工場に夕方から他の工場の技能実習生も集め、実習生全員にコンスタントに残業を割り当てられるように配慮しています。

求人票に平均的な残業代を記載する

特定技能外国人や技能実習生を募集する際、求人票に残業代を記載しないと、海外の人材会社(送出機関など)が残業代について外国人材に口頭だけで説明するケースがあります。また、応募者が増えるように、多い月の残業代だけを伝えるケースもあります。

口頭での説明にまかせると、情報が誤って伝えられ、就労後に外国人材から「事前に聞いていた残業代より少ない」と不満を持たれ、トラブルになる場合があります。また、残業代が分からない求人票だと、手取り給料が不確かなので応募者が集まりにくくなります。

そこで、例えば過去1年間の残業代の平均額などを求人票に記入すると、外国人材は給料について正しく認識して応募することができます。中には、過去1、2年間の賃金台帳を(監理団体などを通して)送出機関に送って実情をより正確に知らせる受け入れ事業者もあります。

基本給・残業代を補うには

外国人材にどうしても平均相場の基本給・残業代を提供できない場合、何らかの手当や賞与で補うことができます。

また、寮費や寮の水道・光熱費、通信費(インターネット代)を安く設定することで外国人材の手もとに残る給料を増やすケースも一般的です。

さらに、地方の受け入れ事業者の中には、農産物の支給や家庭菜園スペースの提供などさまざまな生活サポートを提供している事例もあります。

まとめ

このページのまとめ

・日本と人材送出諸国との賃金格差が縮小し、移住労働者の海外就労先として日本の魅力は小さくなりました。そのような中で良い外国人材を安定的に確保するには、相場を意識した給料や諸条件が必要です。

・それには、基本給だけでなく残業代や諸手当も含めた給与水準が同じ職種・地域での平均以上である必要があります。

・特定技能外国人や技能実習生の多くは残業を歓迎します。彼らになるべく多く残業を割り当てるように工夫している受け入れ事業者がたくさんあります。

・残業代が分からない求人票だと、手取り給料が不確かなので応募者が集まりにくくなります。また、口頭での説明にまかせると、情報が誤って伝えられ、就労後にトラブルになる場合があります。そこで、過去1年間の残業代の平均などを記入すると、外国人材は給料について正しく認識して応募することができます。

・外国人材に払える基本給・残業代がどうしても平均を下回ってしまう場合、何らかの手当や賞与で補うことができます。さらに、寮費や水道・光熱費、通信費を安く設定することで外国人材の手もとに残る給料を増やすこともできます。

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