基礎知識

〈重要〉2026年閣議決定「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を分かりやすく解説[前編]

日本に住む外国人が増え、外国人の受け入れ方針や共生社会の推進が課題となっています。このため、関係閣僚会議は2026年1月、「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(通称・総合的対応策)を閣議決定しました。これは今後の外国人政策の方向性を示す指針です。この記事では、総合的対応策のうち外国人雇用に特に関係が深いテーマを取り上げ、背景説明を加えながら分かりやすい言葉で説明します。

◆このページの内容

[後編の内容]

総合対応策決定までの流れ

訪日外国人旅行者数は2025年に約4,000万人、在留外国人数も同年6月末時点で約400万人に達し、いずれも過去最多を更新しました。今や、外国人の存在は日本の労働市場や地域社会にとって不可欠なものとなっています。

こうした状況への対応を協議するため2025年11月、自民党内に「外国人政策本部」が設置され、同本部は「出入国・在留管理等の適正化・外国人受け入れ」「外国人制度の適正化等」「安全保障と土地法制」という三つのプロジェクトチームで議論を重ね、2026年1月に提言をまとめました。

関係閣僚会議は同月、その提言を土台として「外国人の受け入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(通称・総合的対応策)を閣議決定しました。これは外国人受け入れ拡大と社会秩序維持を両立させるための包括的な工程表と位置づけられています。

総合的対応策では、外国人を巡る課題を整理した上で、対応の進捗状況に応じて「すでに実施中の施策」「すみやかに実施すべき施策」「今後の課題として検討すべき事項」が示されています。

この記事では、その中で外国人雇用と特に関係の深いテーマを取り上げ、制度の背景や現場への影響を分かりやすく説明します。

在留資格審査の厳正化

現状と問題点

・現在、出入国在留管理庁(以下「入管庁」)や地方自治体、年金・医療保険を所管する各行政機関は、それぞれ在留外国人に関する情報を保有していますが、これらの情報は十分に連携されていません。そのため、各外国人の在留状況や公的義務履行状況(税金や社会保険料の納付状況など)を一体的に把握することが難しくなっています。

・在留審査に活用できる情報が十分に共有されていないことも課題です。例えば、税や社会保険料の未納状況がリアルタイムで把握できないため、入管が在留期間更新や在留資格変更の審査で適正な判断を行えない場合があると考えられています。

実施中の対策

・こうした課題を踏まえ、各行政機関が保有する外国人関連情報をマイナンバーを介して相互に連携・活用できるようシステム整備が進められています。

・関係機関から入管庁に提供する情報としては、国民健康保険料や国民年金保険料の納付状況、地方税の納税情報、医療保険の被保険者資格情報などがあります。逆に入管庁から他の行政機関に提供する情報としては、健康保険制度に関連しては国籍や在留資格の情報、児童手当制度に関しては出入国履歴などがあります。

今後の課題

・デジタル庁が主導する「公共サービスメッシュ」を本格的に活用することが重要です。これは、行政機関が保有するデータを相互連携させるための次世代情報連携基盤で、マイナンバーを活用した取り組みです。この基盤を活用することで、例えば、地方税の納税情報を関係機関から入管当局に提供し、在留審査の判断材料として活用することができます。生活保護に関して、入管から自治体へ国籍や在留状況などの情報を提供し、受給資格の判断を適正化することもできます。

在留資格などのあり方

① 特定技能制度と育成就労制度の適正化

現状と問題点

・特定技能制度や、技能実習制度に代わる新制度である「育成就労制度」については、分野別の運用方針を適切に設計する必要があります。分野ごとの受け入れ見込数(受け入れ上限)を適切に設定することが求められます。

・育成就労制度では、一定期間の転籍制限が設けられますが、その期間設定についても慎重な検討が必要です。制限が厳し過ぎると外国人材の不満や失踪リスクを高め、ゆるすぎると地方の受け入れ企業が育成した人材が都市部に過剰に流出する懸念があります。

・特定技能制度では、特定技能評価試験や日本語試験の合格証明書の偽造・改ざんが疑われる事案が発生しています。不正対策が急務です。

実施中の対策

・政府は特定技能制度および育成就労制度について、分野別運用方針の具体化を進めており、人材需要の将来見通しや国内雇用への影響を踏まえた制度設計を検討しています。

・育成就労制度は2027年度からの施行が予定され、これに先立ち、育成就労外国人やその受け入れを支援・監理する「監理支援機関」の許可や「育成就労計画」の認定に関する事前申請を2026年度から受け付ける予定です。

すみやかに実施すべき対策

・分野別運用方針を早期に確定し、受け入れ企業や関係機関が早めに準備できるようにすることが求められます。

・育成就労制度に関する関係省令や運用要領について周知を徹底し、2027年度の施行に向けた準備を着実に進めることが求められます。

・特定技能評価試験等の合格証明書については、電子化やデータベース照合を導入し、偽変造防止の具体的な取り組みを強化することが必要です。

今後の課題

・育成就労制度を管理・監督する「外国人育成就労機構」については、育成就労外国人の支援・保護や相談援助を適切に行えるよう、十分な人員と専門性の確保が必要です。

・育成就労制度の運用に当たっては、深刻な人手不足に直面する地方で安定的に人材確保が行われるよう、地方の受け入れ企業等に配慮した施策を継続実施する必要があります。

・外国人材の受け入れ状況や転籍の実態を継続的に把握し、必要に応じて受け入れの一時停止や受け入れ見込数の再設定などを柔軟に検討していく姿勢も重要です。

② 在留資格「経営・管理」の適正化

現状と問題点

・在留資格「経営・管理」は、日本で事業を立ち上げ、または企業経営に携わる外国人のための在留資格です。しかし、近年、実質的な事業活動を伴わない法人設立や名義借り的な手法でこの在留資格を取得する事案が問題になっています。また、その結果として、公的医療保険の不適正利用が疑われるケースも報告されています。

・こうした状況を受け、2025年10月に許可基準が厳格化され、事務所要件や事業規模要件の確認が強化されました。ただし、既に許可を受けた在留者の中には、実態確認が不十分なケースが含まれている可能性もあります。

実施中の対策

・入管当局は改正許可基準の施行前に提出された申請についても、在留資格取得や在留期間更新の審査を強化しています。具体的には、事務所の独立性や賃貸借契約の実態、従業員の有無、売上・取引実績、納税状況などをより詳細に確認しています。。

すみやかに実施すべき対策

・同一住所に多数の法人が集中するケースなど、名義貸しや事業の実態性が疑われやすい案件については、現地調査や追加資料提出を徹底し、実体が確認できない場合には在留期間更新を不許可とするなど厳正な対応が求められます。

今後の課題

・在留中の「経営・管理」資格者について、実態調査や納税状況、社会保険加入状況などを踏まえ、継続的に事業実態を把握する仕組みを強化すべきです。特に、売上や納税実績があまりないケースについては、在留の適格性を慎重に判断する必要があります。

・不適正な申請取り次ぎを行う行政書士やコンサルティング事業者への対応も重要です。虚偽や誇張を含む申請を助長する事業者に対しては、指導や処分なども検討すべきです。

③ 在留資格「技術・人文知識・国際業務」の適正化

現状と問題点

・「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる「技人国」)は就労系在留資格の中心制度で、理工系技術者、企画・営業・管理などの人文知識分野、通訳・語学指導・海外業務対応といった国際業務に従事する外国人が対象です。この在留資格の在留者は2014年末の約123,000人から2025年6月末には約458,000人に増えました。

・しかし、特に人材派遣の形態において、この在留資格で認められていない単純労働や補助的業務に従事している事案が多いと指摘されています。形式上は専門職としながら、実態は現場作業中心というケースがあり、是正指導や在留資格取消に至った事例もあります。

・こうした不適切な就労状態のまま在留年数を重ねても永住要件を満たしてしまうことも課題です。

実施中の対策

・入管当局は就労内容が疑わしい在留審査について、書面審査だけではなく、就労先の実地確認を強化するなど、審査を厳格化しつつあります。業務内容や職務分担、指揮命令系統などを総合的に確認し、本当に専門性の高い業務に従事しているかどうかを判断する取り組みを進めています。

すみやかに実施すべき対策

・今後、本来は認められていない業務に従事させている疑いのある受け入れ企業等や派遣先に対し調査を強化する必要があります。特に派遣の場合、実際の業務内容が派遣先で決定されるため、派遣元・派遣先双方の責任を明確にしたうえで許可の在り方を再検討する必要があります。例えば、派遣先で専門的業務にのみ従事させることを派遣元が受け入れ時に誓約するなどの抑止策が求められます。

今後の課題

・受け入れ企業等の責任をより明確にし、専門的業務しかやらせない体制を確保することが重要です。

当サイトの考察

・企業は採用時に約束した職務内容や入管に申告した職務内容と実際の職務が一致しているかどうかを定期的にチェックする必要があります。

・派遣の受け入れ企業は、自社が指揮命令を行う業務内容について説明責任を負うので、在留資格との適合性をしっかり意識する必要があります。

④ 在留資格「留学」の適正化

現状と問題点

・在留資格「留学」は、日本の大学・短大、専門学校、日本語学校などで学ぶ外国人のための在留資格で、2014年末の約215,000人から2025年6月末は約435,000人へと倍増しています。

・一方で、本来の在留目的である「学業」より就労を主目的として在留していると疑われるケースもあります。具体的には、資格外活動許可の範囲である「週28時間以内」という制限を超えて働く留学生や、複数の勤務先をかけ持ちしてフルタイムに近い就労を行っている留学生もいます。

実施中の対策

・文部科学省と入管庁が連携し、教育機関における在籍管理の徹底を進めています。特に日本語教育機関については、日本語教育機関認定制度のもとで教育内容や学生管理体制を適正化させ、不適切な受け入れを行う学校の排除を進めています。

・厚生労働省が所管する外国人雇用状況届出制度を活用して各留学生のアルバイトの実態を把握する取り組みも行っています。

すみやかに実施すべき対策

・外国人雇用状況届出をより積極的に活用し、複数の事業所でアルバイトをしている留学生を特定するなど、横断的な実態把握を進める必要があります。そのうえで、入管当局と教育機関が連携し、本人への指導や在留資格の適正性の確認を行うことが求められます。

・2027年開始予定のマイナンバーを活用した行政機関間の情報連携に合わせ、留学生の所得情報を在留審査に活用することを検討すべきとされています。

今後の課題

・日本語教育機関等が留学生の資格外活動の状況をどこまで把握し、どのように指導責任を果たすべきかについて、制度・運用の両面から検討を進める必要があります。

当サイトの考察

・企業は留学生をアルバイトとして採用する際、1週間の勤務時間管理を厳格に行なう必要があります。特に、「他社で何時間働いているか」は企業側の確認義務と判断される方向にあります。

・勤務時間違反(オーバータイム)が判明した場合、本人だけでなく受け入れ企業にも行政指導が及ぶ可能性があるので、注意が必要です。

⑤ 在留資格「永住者」の在り方

現状と問題点

・「永住者」には在留期間の制限がなく、就労制限も原則として課されません。永住者は2014年末の約677,000人から2025年6月末には約932,000人へと大幅に増え、許可要件がゆるいとの指摘もあります。一定の在留年数や安定した収入があれば許可されるケースが多く、日本社会への理解度や公的義務の履行状況が十分に勘案されていないのではないかという懸念が示されています。

・永住許可後について、在留資格の取消事由が限定的であるため、許可後に税を滞納するなど社会的責任を十分に果たしていない場合でも資格を取り消すことが困難と指摘されてきました。

実施中の対策

・入管庁は永住許可に関するガイドラインを見直し、税金や社会保険料の納付状況を厳しく勘案して在留審査をしています。

・2024年の入管法改正で、公租公課の不払いや一定の刑罰法令違反などが永住者に対する新たな在留資格取消事由として追加されました。この改正は2027年4月に施行されます。

すみやかに実施すべき対策

・永住許可に至るまでの在留資格の種類や在留年数、就労状況などを改めて検証し、審査をさらに厳格化する必要があります。

・新たに導入される永住者の在留資格取消制度について、どのような場合に取り消されるかを示すガイドラインの策定が求められます。

今後の課題

・永住許可基準の中でも、独立した生計を営む能力(独立生計要件)や国益要件の内容を見直し、日本語能力や日本の制度・ルールへの理解をより重視する方向での制度設計が検討されています。例えば、日本語学習や生活ルールに関する講習の受講を許可要件とすることも議論されています。

・実際の取消運用の状況を検証しながら、将来的には取消事由の範囲を拡大する必要があるかどうかについても検討していくことが求められます。

⑥ 帰化の厳格化の検討

現状と問題点

・帰化は、外国人が日本国籍を取得する制度で、在留資格制度とは異なり、国民としての権利義務を全面的に担うことになります。しかし、制度運用をめぐって、要件の分かりにくさや永住許可との整合性に関する指摘があります。例えば、永住許可のガイドラインでは、原則として日本に10年以上在留していることが求められている一方、帰化は「引き続き5年以上日本に住所を有すること」で足ります。

実施中の対策

・帰化の審査においては、国籍法が定める住所要件、生計要件、素行要件、能力要件などを満たしているかどうかが主に審査されます。そのうえで、「日本社会に融和していること」については法務大臣の裁量に委ねられ、生活状況や日本語能力、地域社会との関わり、家族構成などを総合的に考慮して判断がなされています。

すみやかに実施すべき対策

・「日本社会に融和していること」という要件の審査について、より明確な基準を設けることが課題です。具体的には、原則として日本に10年以上在留していることを求めるなど、永住要件との整合性を意識した運用などが議論されています。

[後編につづく]

-基礎知識

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