採用ノウハウ

〈外国人採用の裏側〉採用面接の“さくら”とは? 面接での倍率設定には注意が必要

海外から外国人を雇い入れる場合、面接に求人数の3倍の応募者を求めるといった事例がよくあります。しかし、国や業種によっては、応募倍率を保つのが困難になっています。その場合、偽の応募者「さくら」が面接に加えられることがあります。外国の人材会社(送出機関等)は応募者を紹介するブローカーに対し、「さくら」を紹介してもらった場合も謝礼を払いますが、その費用は最終的には採用された人たちが負担します。そして、採用された人材が多額の借金を抱えて来日すると、待遇になかなか満足せず、働きぶりや職場定着に影響します。

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ポイント解説

◎特定技能外国人や技能実習生を海外から受け入れる場合、求人の3倍の応募者集めを外国の人材会社(送出機関等)に求めるといったケースがよくあります。しかし、国や業種によっては、応募者集めが難しくなっています。

◎事業者から求められた応募者数を集めるのが難しい場合、送出機関が面接に「さくら」を入れることがあります。「さくら」とは偽の応募者です。

◎「さくら」の応募者が間違って面接に合格してしまうこともときどきあります。

◎送出機関は「さくら」を集めたブローカーにもさくら1人につき数万円の紹介謝礼を支払っています。これらの費用は、最終的には、採用された人たちが負担させられます。

◎多額の借金を背負って来日した特定技能外国人は給料だけに関心が集中し、仕事や日本の生活に慣れたら、少しでも給料の高い会社に転職してしまいがちです。技能実習生も大きな借金を抱えて来日すると、給料以外の面で好条件をそろえても、なかなか満足してくれません。

面接に「さくら」の応募者が入ると、採用した人材の金銭負担が増え、来日後の職場定着を妨げる原因になります。面接の倍率は、人材会社(送出機関等)や監理団体と相談しながら決めましょう。また、応募について適切なアドバイスをしてくれる人材会社や監理団体等を探しましょう。

◆このページの内容

国や業種によっては十分な人材集めが困難

日本の受け入れ事業者(企業、団体、個人事業者)が特定技能外国人や技能実習生を海外から受け入れる場合、求人の3倍の応募者集めを外国の人材会社(送出機関等)に依頼するといったケースがあります。多くの応募者の中から選りすぐって少しでも良い人材を採用したいと考えるのは当然ですが、注意点があります。

国や業種によっては、応募者集めが難しくなっています。例えば、ベトナムでは、新型コロナの感染拡大前は倍率3倍で面接するのが通常で、多くの送出機関がこれに対応できていました。しかし、新型コロナ収束後は、ベトナムから日本に行きたい若者が以前より減り、受け入れ事業者が求める倍率の応募者を確保することが難しくなりました。ベトナムに代わって日本への人材輩出が急増しているインドネシアでも、地域によっては高倍率に対応する応募者集めが難しくなりつつあります。どの国であっても、人材ニーズが増えれば、応募者集めはだんだん困難になっていきます

例えばベトナムでは、建設や農業など不人気業種での人材募集が特に難しく、ブローカーが送出機関に応募者を紹介するときに送出機関から受け取る謝礼も食品製造などの人気業種に比べて高額になっています。また、不人気業種なのに待遇も相場以下であれば、応募者募集は困難を極めます。

外国人採用面接の「さくら」とは?

受け入れ事業者が求める応募者数を集めるのが難しい場合、外国の人材会社(送出機関等)が面接に「さくら」を入れることがあります。例えば、5人の求人に対し3倍の応募者を集めるようにリクエストがあった場合、本当の応募者を10人集め、残る5人は偽の応募者(さくら)で補うのです。複数の送出機関経営者らによると、これは決して特殊な事例ではなく、多くの送出機関で行われています。

そして、「さくら」の応募者はできるだけ面接に合格しないように受け答えをしますが、ときどき間違って合格してしまうこともあります。その場合、外国の人材会社が後日、監理団体や受け入れ事業者に「合格者に健康診断で問題が見つかった」「親が急に猛反対し出して、日本に行けなくなった」などと説明し、他の応募者を繰り上げ合格させるように求めてきます。

もし、採用を決めた外国人材に関して後からこのような断りが入った場合、選んだ人材が「さくら」だった可能性があります。

「さくら」の加入で企業はこれだけ損をする

「さくら」の弊害は、受け入れ事業者が送出機関にだまされるということだけではありません。例えば、ベトナムの送出機関は「さくら」を紹介したブローカーにもさくら1人につき数万円の紹介謝礼を支払っています。これらの謝礼が最終的には、採用された人たちの負担になります。

ベトナムでは、不人気業種では正規の応募者1人につき1,500ドルの謝礼をブローカーに支払うこともあります。これは、最終的には、合格者が送出機関に支払う手数料に上乗せされます。面接に合格した応募者は自分の紹介謝礼(ブローカーへの支払い)に加え、「さくら」の紹介に対してブローカーに支払われた謝礼も追加で負担することになり、銀行や親せきから借りるお金が大きな額になってしまいます。

そして、多額の借金を背負って来日した特定技能外国人は給料だけに関心が集中し、仕事や生活に慣れたら、少しでも給料の高い企業に転職する傾向があります。せっかく仕事を覚え日本にも慣れてもらい、これからというときに辞められると、企業にとって大きな痛手です。

技能実習生や育成就労外国人の場合も、不当に大きな借金を抱えて来日すると、給料に関心が集中し、経営者が給料以外の面で好条件をそろえても、なかなか満足してくれません。そして、待遇に不満を持ちながら働くので、働きぶりは悪くなり、職場の雰囲気にも影響します。ひどい場合は、悪い仲間から目先の好条件をちらつかされて失踪・不法就労に走ってしまうケースもあります。

採用に関して適切な助言を得るには?

このように、面接に「さくら」の応募者を入れられてしまうと、採用した人材の金銭負担が増え、来日後の職場定着を妨げる原因になります。

こうした事態を避けるには、良い人材会社(送出機関等)や監理団体と取引をすることが一番大切です。良い人材会社や監理団体なら、受け入れ事業者が求める応募者数を集めるのが難しい場合、労働条件(手取り給料など)を引き上げるか面接の倍率を下げるように助言してくれます。そのときはアドバイスをきちんと受け止め、適切に対応することが大切です。

まずは、良い送出機関を探すか、良い送出機関と取引をし適切なアドバイスをしてくれる監理団体を見つけることから始めましょう。

まとめ

このページのまとめ

  • 日本の企業等が外国人を海外から受け入れる場合、求人の3倍の応募者集めを求めるケースなどがよくあります。しかし、国や業種によっては、応募者集めが難しくなっています。
  • 事業者から求められた応募者数を集めるのが難しい場合、送出機関が面接に「さくら」を入れることがよくあります。
  • 「さくら」の応募者が間違って面接に合格してしまうこともあります。
  • 送出機関は「さくら」の紹介についてもブローカーにも謝礼を支払っています。これらの謝礼が、最終的には、採用された応募者たちの負担に上乗せされます。すると、彼らの金銭負担が増え、来日後の職場定着を妨げる原因になります(お金だけに関心が集中するため)。
  • 適正な面接を行うためにも、適切なアドバイスをしてくれる良い送出機関や監理団体等を見つけましょう。

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